2007-02-21

連載・新タワー候補地を"経営"する(3)

学生それぞれの「すみだ」

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 地域経営ゼミ(友成真一・早大理工学術院教授)の活動の中で、中心的な役割を担うのが、8人のコーディネーターだ。彼らはかつて受講した学生で、同ゼミのアドバンスト(上級)コースとして通年履修している。

2年目の「すみだ」を見たコーディネーターと、初めて「すみだ」に触れた今年のゼミ生。それぞれがどのような感想を抱いて前期を終えたのか。

コーディネーターって難しい

 「ゼミ生のころは楽だった。すみだの活性化という課題が明確だったから。今は何に取り組むかを自分で設定し、検証と考察を繰り返す日々」と前期を振り返るのは、政治経済学部3年の古屋智子(さとこ)さん。「アドバンストコースという友成教授の真意がかすかに見えた気がした」と、コーディネーターとして参加する意義を見い出したようだ。

講師には毎年同ゼミを講義を行っている人もいる。前回取り上げたデザイナーの高橋正実さんもその一人で、コーディネーターの立場で講義を受けると、印象が違うようだ。政治経済学部4年の吉田健太郎さんは「昨年聞いたときは、話がさっぱり分からなかったが、今年改めて聞いたときに、自分が1年間学んできたこと、そしてこれから社会で実現していきたいことと、スッとつながっていった」と感想をもらしながらこう続けた。「見えなかったものがよく見えるようになる。そんな感覚を味わった」。

また、同じ場所を訪れても、新しい発見があるという意見もあった。第一文学部3年の佐藤陽子さんは「ゼミ生であった時とは違う視点で、すみだを見ることができていることに気付いた」と感想を寄せた。新たな視点で「すみだ」を見られた理由を、「昨年1年間の経験を通して『私がすみだに成長させてもらった』から」と語る。

彼らは昨年と違う「すみだ」を発見できた一方、自分なりのコーディネーター像探しに悩んでいたようだ。政治経済学部5年の山内英嗣(ひでつぐ)さんは「コーディネーターという立場に難しさを感じた。本を読んでみたところで、極意が身に付くわけでもなく...」と苦悩する。

不安と期待の入り交じるゼミ生

一方、ゼミ生は1年目ということで、どう活動すれば良いかに悩みながら前期を過ごした人もいた。「どれも受け身で聞いていることが多かった」と、教育学部3年の山森明日葉さんは、なかなか自主的に動けなかったことが残念なようだ。

また、周囲の「すみだ」に関する知識の多さに圧倒され、やや不安を感じたとの感想を寄せたのは国際教養学部1年の大野真以子さん。「すみだのことを、まだよく知らないので大丈夫かなと思う」。

ゼミ生の多くは、こうした不安を抱きつつも、さまざまな人に出会えたことは良かったという。

後期はどうしたい?

記者が学生に尋ねたアンケートで「後期はどのようなことに取り組みたいか」との問いに対し、「人」をテーマに活動したいという回答が多く寄せられた。

「現状だと、やはりお客さん感は否めない」と感じた商学部3年の平野峻さんは、「もっとミクロな視点に立ちたい。お年寄りや、主婦、子供たちなど墨田区民に近づきたい」そうだ。実際に同区で生活している人とふれあうことで、良い点や悪い点を把握したいという。

地域経営の“結果”を見届けたいというは、コーディネーターの吉田さん。「大学生活ラストの年なので、基本的に来年はない。だからこそ地域が動く感じを味わいたい」と後期への期待感を寄せた。「小さなことでも良いから、何か結果を見てみたい」。

ゼミ生をはじめ、地域経営ゼミの学生たちは、8月1日から3日間の合宿で、「すみだ」の人たちへのインタビューや、後期の具体的な行動計画を検討する。現在学生たちは合宿へ向け、企画案の最終的な取りまとめに奔走している。(つづく

写真1:班ごとに分かれた学生たちは、コーディネーターを中心に議論を進めていく=5月25日、早稲田大学で(撮影:吉川忠行)
写真2:大学内の講義だけではなく、墨田区内を歩くことで学生たちは地域経営を考える=6月22日、キラキラ橘商店街で(撮影:吉川忠行)

■連載・新タワー候補地を"経営"する(地域経営ゼミ前期特集─全4回)
第4回 新東京タワーを建てる意義は?(06年07月28日)
第2回 デザインは相手への思いやり(06年07月26日)
第1回 なぜ新東京タワーを誘致した?(06年07月25日)



初出:2006年07月27日21時10分 ライブドア・ニュース

0 件のコメント: