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2011-03-01

「ジャスコのある風景」~パイロット版~

今から2年前の2009年。サッカー取材も終わり、年も明けてふと思ったこと。

「なぜ東京にジャスコがあるのか」

創業者の岡田卓也は「狸や狐の出る場所に出店せよ」と言っていたはず。
気になったのでパイロット版でも作ってみようと都内全7店舗を撮ることにしました。

・葛西店           1982年11月30日開業
・御嶽山駅前店       1986年4月25日開業
・南砂店           2000年11月29日開業
・品川シーサイド店     2002年10月17日開業
・昭島店           2003年7月15日開業
・東雲店           2003年10月28日開業
・むさし村山店       2006年11月18日開業
*当時ジャスコのウェブサイトには「南砂町スナモ店」(2008年10月9日開業)が
  載っていましたが、現地に行ったら「イオン食品館」だったので除外。

そんなジャスコも、今日(2011.3.1)で全店イオンになってしまいました。
パイロット版は友人たちに見せる程度でと思っていましたが、せっかくなので全7店のうちの4店を紹介することにしました。
スタート当初は“まち”と“写真”がテーマだった当ブログの主旨に久々にあった内容かと。

私は大学でまちづくりを研究していたのと、建物を擬人化したらどうなるかに興味を持っていたので、そんな視点でそれぞれの街で感じたことなどをコメントしてみました。

80年代にできた葛西店と御嶽山駅前店は、ほぼ同じ外観デザインで、葛西店は当時スーパーで流行っていた、景色が見えるエレベーターが据え付けられています。
今となっては「総合スーパー全盛期の遺産」というような悲壮感が感じられます。同様のことは同年代のダイエーなどにも言えます。

「懐かしき総合スーパー全盛期」葛西店

一方、2000年代に作られた5店舗はいずれもプレハブ調で、すぐに壊せるような作りです。
特徴として入り口上部に「JUSCO」のロゴがあり、そこだけはガラス張り。
安っぽい豪華さを演出して我々庶民を出迎えてくれます。
「車のためのジャスコ」南砂店

7店舗の中で一番性格が良さそうだったのは、御嶽山駅前店です。
東急池上線が目の前を通り、商店街の中にあってジャスコっぽくありません。
「家事は何でも出来て家族が一番のおかあちゃん」という感じです。
「ジャスコの良心」御嶽山駅前店

逆に性格が悪いというか「ルックスと○○○は最高だが家事はまるでダメ」という感じだったのは品川シーサイド店です。お金がかかりそうな女の子、という感じですね。
でも一番タイプの店でした。
「偉大なるジャスコ」品川シーサイド店

全店同じ季節、同じ時間帯、同じような天気で撮る必要があるので、非常に時間がかかるパイロット版作りでした。なので、今後も同じようなことをやるかは微妙ですが、都市とスーパーの考察は今後も続けたいと思います。

2009-05-07

池袋三越が閉店

昨日5月6日で池袋三越が閉店しました。
終戦から10年後の1955年に着工、2年後の57年10月1日に開店した同店が51年の歴史に幕を下ろしたわけです。
私はあまり行かなかったのですが、最後の買い物でもと思って、肉を買いに行くついでに閉店式典も見ておきました。

「最後のお客様をお送りするときに『また、いらしてください』と言えなかったのがさみしかった」という店長の挨拶に、本当に閉店してしまうんだな、としみじみ。
駅に直結した西武と東武に比べ、立地と規模の点で不利だったので閉店は仕方ないでしょうが、池袋というダサい街で数少ない高級感のある百貨店だっただけに誠に残念。1Fにあったヴィトンは西武に移る予定ですが、「なんか違うんじゃねーの?」って感じがします。

ちなみに、三越の売り場面積がなぜ狭かったかというと、同時期に進出した丸物(現在のパルコ)に対して地元商店街の反発が強く、三越は当初計画の五割減、丸物は二割六分減の売り場面積となったそうです(豊田薫『東京の地理再発見』、1994年・地歴社刊)。

これまで東京の繁華街は西部が栄える「西高東低」と言われてきたけど、今後は南部が栄える「南高北低」が強まり、いっそう「南北問題」ということが語られると予想されます。
このままだと「南大宮」とか揶揄されかねないんじゃないかと心配になります。

三越の跡地には、2010年にヤマダ電機が入るようですが、これはビックカメラつぶしなのは言うまでもないでしょう。カニバリズムにしかならない気もしますが……。
豪華だった内装は、ヤマダになってもそのままだと思いますが、どうもちぐはぐな気もします。

私が6年前に書いた卒論のテーマは「池袋はなぜダサいのか」で、池袋東口について調べたのですが、そのときに池袋の消費行動の大半は駅周辺とサンシャインシティで行われていて、その中間はスッポリ抜けているということが改めてわかりました。実感としてはあったのですが、調査結果もその通りだったのです。
都内のおしゃれな街はだいたい起点と終点の間も栄えていて、それが街の色になっているのだけど、池袋はそれが欠落しているわけです。

もし、三越が東急ハンズみたいな店を出していたら(=池袋店を改装してたら)、たぶん繁盛していたと思うし、ハンズは今頃撤退なんてことになってたかもしれない。そして、池袋の街としての回遊性がかなり向上していたはず。
でも、ヤマダじゃあそういうことにはならないでしょうね。

しかし同じ「キタカン系量販店」でもコジマやケーズだったら許せるのはなぜなんでしょう。
別にヤマダでいやな思いをしたわけでもなんでもないんですが……。

2009-03-20

池袋西武、WAVE跡地はLoftに

1月12日に閉店した池袋西武12階のWAVE。その跡地に3月20日、Loftの文具売り場がオープンしました。

上りエスカレーター正面が筆記具です。WAVE時代はスポーツや映像資料系DVDがあったあたりです。
従来文具売り場は11階でしたが12階へ移動。現在は11階が工事中となっています。
7月末までLoftのリニューアルが行われるので、11階が改装完了すれば10階の工事スタート、という感じで進んでいくようです。

2009-01-13

池袋東口の卒論から5年

大学で池袋東口に関する卒論「ハレの場になりきれない街・池袋」を書いてはや5年。振り返ると結構池袋東口も変化しています。

04年7月にタクシープール(グリーンプラザ跡地)や、05年4月にふくろう交番(関連記事)ができたりと、駅前の景色が変わったものもありました。

また、ビックカメラが07年4月に池袋東口駅前店をリニューアルして「池袋東口カメラ館」がオープンしたり、ビック・カメラ専門館がリニューアルで池袋東口総合館になったりと、池袋を代表する量販店にも変化がありました。ヤマダ電機もLABI池袋を07年7月にオープンさせましたね。だからビックが改装したって事ですが。そのヤマダ電機は09年5月に閉店となる三越池袋店跡に出店するようです。個人的にはヨドバシの方がいいですけど。

お店関係だと、昨日1月12日で西武池袋店12階のCDショップ「WAVE」が閉店になりました。12日は元スタッフと思われる方が同僚に挨拶に来ていたりと、最終日らしい感じがしました。
昔は今のBEAMSの所にWAVEがまるまる入ったビルがあったりして、かなり規模がでかかったのが印象に残っていますが、それも随分前のことになってしまいました。
お店の方に聞いたところ、WAVE撤退後にCDショップが入ることはないそうで、どのような売り場に変わるかもまだ発表になっていないとのこと。現在西武池袋店は全館改装を順次行っているので、今回の撤退決定も「この影響があるのでは」(前出スタッフ)とのことでした。

他にも、サンシャイン60通り沿いの飲み屋街跡に出来た「ラーメン名作座」が再開発の影響でなくなり、サンシャイン通り中程にある歩道の広い場所もキレイな遊歩道に改装され、車道も速度を出しにくくするためS字状に整備されました。1951(昭和26)年に東口駅前の露天移設でできた「人生横丁」も取り壊しになりました。

今回はざっくりとダラダラ書いてしまいましたが、また機会を見て池袋東口ネタを書いてみようと思います。

2008-09-30

新東京タワー記事の再掲完了

私が7月末まで所属していたオーマイニュースで取材・執筆した新東京タワー関連の記事計15本を自分のブログに掲載しました。これはライブドア・ニュース時代の49本と同じく、オリジナルデータが消えても新タワーについて研究する方などのお役に立てればとの思いで再掲しました(“新東京タワー”のタグでまとめてます)。

7月末まで所属といっても、最後の出社は6月の終わりだったので、7月14日の新タワー起工式は個人で取材しました。8月は北京オリンピックの取材をしつつ、期間中に上海へ転戦し、オープン前の上海環球金融中心(上海ヒルズ)や周辺地域も撮ってきました。これらはどこかで新タワーについて書く際に使えればと考えています。

新タワーはともかく、地域活性化などの街ネタはなかなか読んでもらえないジャンルですが、せっかく長いこと続けてきたので、できればライフワークとしてこれからも取材を続けていこうと思います。

2008年9月30日
吉川忠行

2008-09-29

新タワー名「東京スカイツリー」に決定

全国投票で3万2699票、空に向かう大きな木をイメージ

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

今年7月に着工予定の新東京タワーを建設する東武鉄道(東京都墨田区、根津嘉澄社長)と同社が100%出資する事業会社新東京タワー(東京都墨田区、宮杉欣也社長)は10日、新タワーの正式名称が「東京スカイツリー」に決定したと発表した。

「東京スカイツリー」は3月に作詞家の阿木燿子さんら有識者10人による「新タワー名称検討委員会」(座長・青山やすし元東京都副都知事)が選定・発表した「東京EDOタワー」「東京スカイツリー」「みらいタワー」「ゆめみやぐら」「ライジングイーストタワー」「ライジングタワー」の6案のうち、全国投票でもっとも投票数が多かった。投票は4月1日から5月30日まで行われ、総投票数11万419票のうち、東京スカイツリーは3万2699票を集め、第2位は「東京EDOタワー」の3万1185票だった。

 新タワー社の宮杉社長は、選考結果について、同日東京・銀座のコートヤード・マリオット銀座東武ホテルで行われた発表会で、「空に向かう大きな木をイメージし、“スカイ”は澄んだ空、“ツリー”は豊かな緑を表しています。新タワーは世界から人が集う場所になるでしょう。日本と世界の人々を結ぶ大樹となるよう、ご支援をお願いいたします」と語った。

2011年度から首都圏の電波塔となる東京スカイツリーの高さは、現在の東京タワーの約2倍となる610メートルで、地上350メートルと同450メートルの2カ所に展望施設が設けられる。建設地は東武伊勢崎線の押上・業平橋(おしあげ・なりひらばし)両駅の周辺地区(敷地面積3万6800平方メートル)で、東京スカイツリーのほかに地上32階地下2階の商業施設などを併設予定。11年12月竣工、12年春の開業を予定している。来年夏には200メートルの高さまで鉄骨が組み上がるという。

墨田区では、東京スカイツリー完成までの建設投資で1496億7000万円、開業後は年間880億円の経済波及効果があると見込む。年間来場者数は、東京スカイツリーには552万人が、周辺施設には2085万人が来場すると見ている。

今回の名称決定に伴い、新タワー社は社名を6月10日付けで「東武タワー スカイツリー株式会社」に変更すると発表した。

候補案別投票数
東京スカイツリー:3万2699票
東京EDOタワー:3万1185票
ライジングタワー:1万5539票
みらいタワー:1万3915票
ゆめみやぐら:9942票
ライジングイーストタワー:6426票

写真1:新タワーの名称は「東京スカイツリー」に決定=10日午後、東京・銀座で(撮影:吉川忠行)
写真2:東京スカイツリーのロゴを発表する宮杉社長(撮影:吉川忠行)

■関連記事
・新タワー全般
新東京タワーはどうなった?
(経済効果は年880億、本当に地元は潤うか?、08年02月14日)
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(台東区との連携など条件付きで、05年03月28日)
特集・どうなる?新東京タワー(4)
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・地域活性化
モノ売り、やめました
(早大「地域を経営するゼミ」×生協×墨田区、07年10月16日)
新タワーは地域のDNAになるか
(特集・地域活性化は誰のために 最終回、07年01月28日)
新東京タワーを建てる意義は?
(連載・新タワー候補地を"経営"する 最終回、06年07月28日)
・名称選考
新東京タワー最終6案「どれもセンスない」
(本当にこの中から選ぶの?、08年05月01日)
なぜ“新東京タワー”じゃダメなのか?
(最終案に残らなかった理由を探る、08年03月28日)
新東京タワー、正式名の候補6案発表
(6月上旬決定、すみだタワーは残らず、08年03月19日)

■関連リンク
ライジング・イースト・プロジェクト(新東京タワー株式会社)

◆

初出:2008年06月10日14時47分 吉川忠行/オーマイニュース

2008-09-28

不景気でも祭りを大切にする“下町の心意気”

墨田区長と早大生が討論会

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

7月に高さ610メートルの新東京タワーの建設が始まる墨田区で8日夜、山崎昇・墨田区長と早稲田大学の学生が、同区や地域活性化について議論する討論会「墨田区役所を裸にする ~区長とのディスカッション~」が行われた。

 墨田区では早稲田大学と2002年12月に締結した産学官連携協定「包括的事業連携協定」に基づき、地元の中小企業も交えた地域活性化の産学官連携に、新タワー誘致前の03年から取り組んでいる。産業以外の分野を含めた連携は全国初の試みで、この一環として「地域を経営する」をテーマにした友成真一・同大学大学院環境・エネルギー研究科教授の「地域経営ゼミ」が、03年4月から同区内で行われており、今年で6期目に入った。

地域がもともと持っている良さや特色、人材などの資源を活用し、地域の価値の最大化に取り組むのが特徴の地域経営ゼミ。必ずしも1年間で成果を求めずに、長期的な視野で地域活性化に取り組むのが特徴で、さまざまな学部から学生が集まる学部横断型のゼミだ。

6回目となる今回の討論会には、早大に日本語の語学留学をしている留学生2人を含む32人の学生が参加した。留学生の参加は今回が初めて。

祭りの寄付は不景気でも集まる

「はじめて墨田区に来ると、墨田区の強みと弱みが見える。(1年間のゼミで)一番期待しているのは、どんなことをすれば若い人が足を運んでくれるかをぜひ提案してほしい」。討論会の冒頭、山崎区長はこう述べ、区内にいるとわかりにくい同区の“強みと弱み”について、外部からの新鮮な視点で指摘を求めた。

 ゼミ生からは、区と国の関係についてや墨田区の魅力など、行政や地域に関するものから、区長がどう家族と接してきたかまで、幅広い分野の質問が出た。留学生からも「女性が政治家になるのが難しいのはなぜだと思うか」「墨田区を若者にどうアピールしているか」という問いかけがあり、予定を10分オーバーする1時間の議論が行われた。

討論会の中で、学生から「区長になってしんどかったことは何か」と問われた山崎区長は、バブル崩壊後に税収が急激に落ち込んだ結果、区の財政が危機的状況になり、職員の給与の一部カットを実施したときのことを挙げた。

「いろいろな部署を回ったときに、苦しいときはみんなでがんばろうという職員の気持ちがありがたかった。(行財政改革により)今は貯金ができるようになった。職員の懐に二度と手を突っ込むことがないようにしたい」と、当時を振り返りつつ語った。

墨田区の良さについては、地域のコミュニティーが根付いている点や、お祭りのときには不景気でも寄付が集まる“下町の心意気”を学生たちにアピールしていた。

「区長をひとりの人間として見られるようになった」

討論会の感想を学生に尋ねると、人間科学部2年の石井沙織さんは、「区長をひとりの人間として見られるようになった。個人を見てくれないと思っていたが、自転車で区内を移動していることなどで親近感を持った。でも聞きたいことは30パーセントくらいしか聞けなかったのが残念。区長自身の幸せが何なのかなどを聞きたかった」と、区長という役職から想像するイメージとは違うものを感じたようだ。

一方、留学生からは、「時間もなかったが、墨田区は若者の居住人口を増やすために何をやっているのかや、区長のアイデアをもっと聞きたかった」という声も聞かれた。

今回の討論会では、墨田区に関することに加えて、区長が自分の子どもとどう接してきたかなど、個人的な話も学生が引き出していた。友成教授に昨年10月に行われた前回との違いを尋ねると、「前回は(はしかの流行などで日程が延期となり)後期の開催だったため、学生が墨田区や区長に関する知識を得てからの討論で、構えてしまっている部分があった。今回は何も知らない状態だったので、区長の本質に迫ることができたのではないか」と、区長がどのような考えで墨田区や自分の家庭に接しているかを、学生がある程度引き出せた要因を語った。

同ゼミでは来週から墨田区内で実地研究を重ね、来年1月に区内で行われる予定の住民や商店主向け報告会で研究成果を発表する。

写真1:山崎墨田区長と早大生の討論会=8日夜、東京・墨田区役所で(撮影:吉川忠行)
写真2:墨田区の良さについて「祭りのときには不景気でも寄付が集まる“下町の心意気”」と語る山崎区長(撮影:吉川忠行)

■関連記事
・地域経営ゼミ5期
「すみだ大好き人間」を区民が育てた
(早大、新タワーの地・墨田区で産学官連携の協定更新、07年12月26日)
モノ売り、やめました
(早大「地域を経営するゼミ」×生協×墨田区、07年10月16日)
新タワー、いくらだったら来てくれる?
(墨田区長と早大生が討論会、07年10月12日)
・地域経営ゼミ4期
新東京タワー以外でも活性化を
(早大生が墨田区で地域活性化案を披露、07年01月19日)
新タワーと江戸情緒の両立を
(墨田区長と早大生がガチンコ討論、06年05月12日)

■特集・地域活性化は誰のために(地域経営ゼミ後期4期特集─全4回)
第4回 新タワーは地域のDNAになるか(07年01月28日)
第3回 商店街が子どもを育てる!(07年01月27日)
第2回 高校生とまち歩きで地元再発見(07年01月26日)
第1回 新タワーで街は幸せになる?(07年01月24日)

■連載・新タワー候補地を"経営"する(地域経営ゼミ4期前期特集─全4回)
第4回 新東京タワーを建てる意義は?(06年07月28日)
第3回 学生それぞれの「すみだ」(06年07月27日)
第2回 デザインは相手への思いやり(06年07月26日)
第1回 なぜ新東京タワーを誘致した?(06年07月25日)

■関連リンク
早稲田大学「地域を経営するゼミ」 国際班(留学生中心の班のブログ)
墨田区・早稲田大学産学官連携事業
墨田区
早稲田大学

◆

初出:2008年05月09日13時30分 吉川忠行/オーマイニュース

2008-09-26

幻となった舎人の新東京タワー計画

誘致合戦敗退から3年、今は一面に菜の花が

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

3月30日に開業する新交通「日暮里・舎人ライナー」。同線は東京・荒川区の日暮里駅から足立区の見沼代親水公園駅までの約10kmを20分で結ぶ。沿線にある舎人(とねり)公園は、2005年3月に新東京タワー建設地の座を争った候補地のひとつ。新タワー誘致に破れてから3年。同線の開業を目前に控えた舎人公園を訪ねた。

当初から厳しかった実現性

 舎人公園の敷地は69万5000平方メートル(計画決定面積)で、東京ドーム約15個分と広大な公園だ。テニスコートや陸上競技施設のほか、キャンプ場などもある。土地の大半は東京都のもので、足立区が所有するのはわずかに6万8000平方メートル。最寄り駅は日暮里・舎人ライナーの舎人公園駅で、同線開業までは路線バスのみだった。首都高速川口線の加賀インターチェンジからは1kmの距離に位置する。

タワーの建設用地は、このうちの2万平方メートルで、舎人公園駅の真横に計画されていた。タワーの高さは地上600メートルで、第1展望室を310メートル、第2展望室を420メートルの高さに設け、開業年度の年間想定入場者数は330万人の計画だった。概算の建設費は307億円で、誘致活動は足立区が行っていた。

 同区では、新タワーと舎人公園の来場者に加え、年間150万人以上の観光客が訪れるという西新井大師との連携を考えていた。また、地元で開業を長年待ち望んだ日暮里・舎人ライナーの利用者増にも寄与できる点も誘致理由に挙げていた。

3年前の誘致合戦で敗因のひとつは、土地取得の実現性だ。舎人公園の管理者は都。石原慎太郎都知事は当時も新タワーに否定的だった。都の関係者に尋ねても、「(企業でいうと)社長がダメだと言ってるのに、現場が許可することはないですよ」という声しか聞かれなかった。

こうして、事業主体が明確であることなどを理由に05年3月、新タワーの「交渉優先候補地」は、第一候補地の「墨田・台東エリア」と、第二候補地の「さいたま市」に絞られ、翌06年3月に「墨田・台東エリア」が最終候補地に決まった。舎人公園の新タワー計画は幻に終わった。

「ここは不便だからダメだよ」

 3年ぶりに舎人公園を訪れると、芝生だった新タワー建設候補地のあたりは、都が整備した菜の花が咲き誇っていた。公園に入ると、菜の花畑とは別に、パンジーや足立区内の野草を集めた花壇を、ボランティア「みどりと鳥の会」の人たちが手入れをしていた。

同会の中心となっている津村昭人さんによると、舎人公園での花壇作りの活動は7、8年前から行っているという。前身となる活動を含めれば10年近いそうだ。現在30人ほどの登録があり、この日も60代を中心に10人くらいの人たちが土を耕したり、雑草を取って花壇の手入れに精を出していた。

 公園の近所に住む津村さんに新タワー誘致計画のことを尋ねると、「あぁ、あったね。詳しくは知らないけど、ここは交通の便が悪いからダメだよ。バスだと渋滞がひどくて日暮里に出るまでの時間が読めない。これ(日暮里・舎人ライナー)ができてもどうだろうなぁ」と悲観的。記者も日暮里駅から舎人公園まではバスに乗って30分弱で着いたが、帰りは1時間近くかかった。タワー誘致に成功していても、車両が小さい日暮里・舎人ライナーと日常的に渋滞に巻き込まれている路線バスでは、輸送力に限界があるだろう。

もうひとりの男性は新タワー自体が不要で、日暮里・舎人ライナーの利用率にも懐疑的だ。

「(建設が決まった)墨田区でももめてるんでしょ? そもそも東京タワーを改良すれば大丈夫らしいじゃない(関連記事)。あんなのはいらないよ。これ(日暮里・舎人ライナー)だって(終点にほど近い)埼玉県まで行けばいいかもしれないけど、2つ先(見沼代親水公園駅)までじゃ、そんなに(通勤などで)使う人はいないんじゃないの?」

広大な公園と手入れの行き届いた花壇の草花を見ていると、誘致合戦に敗れたことは公園と地域の人々には良かったのかもしれない。

写真1:舎人公園の新タワーイメージ図(当時の資料から)
写真2:新タワーの建設用地は舎人公園駅に隣接した場所を想定していた(当時の資料から)
写真3:かつて新タワーを誘致した場所は菜の花が満開=3月27日、東京・舎人公園で(撮影:吉川忠行)
写真4:公園内にはボランティアの人たちが手入れをする花壇がある=3月27日(撮影:吉川忠行)

■関連リンク
日暮里・舎人ライナー
舎人公園(財団法人東京都公園協会)

◆

初出:2008年03月29日15時37分 吉川忠行/オーマイニュース

2008-09-23

新東京タワーはどうなった?

経済効果は年880億、本当に地元は潤うか?

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

2007年12月、首都圏の地上デジタル放送(地デジ)の電波塔となる新東京タワーを建設する東武鉄道(東京都墨田区、根津嘉澄社長)は、NHKや在京民放5社と利用予約の契約を結んだ。これに先駆けて07年9月、東京タワーを運営する日本電波塔(東京都港区、前田伸社長)は、放送局6社へ継続利用を持ちかけたが、東武と6社が契約を結んだことで11年7月の地デジ完全移行後に放送局が新東京タワーを使用することが事実上決まった。着工は今夏を予定している。

 高さ610メートルと、東京タワーの倍近い新タワーの建設は現実のものとなり、建設地となる東京・墨田区内では、07年10月第2週から施工者の大林組により試験杭(くい)を使った工法の確認や強度試験などが行われている。

08年に入り、墨田区は08年度予算案の報道関係者向け説明会を2月8日に行った。13日には、東武鉄道と同社が100%出資する事業会社「新東京タワー」(東京都墨田区、宮杉欣也社長、以下・新タワー社)が、地元町会などに事業の概要を説明し、建設への理解を求めた。

着工に向けて準備が進む新東京タワー。一方で、商店街との共生や建設地周辺の道幅が狭いなど、課題も多い。今回は墨田区の予算案や東武側の説明を基に、新タワー建設の現状と課題をまとめた。

新タワー建設地に32階建てビルを併設

新タワーの建設地は、東武伊勢崎線の押上・業平橋(おしあげ・なりひらばし)両駅の周辺地区で、敷地面積は3万6800平方メートル。押上駅には東武伊勢崎線のほか、京成押上線、都営地下鉄浅草線、東京メトロ半蔵門線の4路線が乗り入れており、墨田区にとって「交通の要衝」だ。

 東武の資料によると、新タワーを中心に、東街区に地上32階・地下2階、西街区には地上7階・地下2階の商業施設を建設。東西の商業施設は新タワーの足元を通る形でつながっており、4階が展望台への出発階、5階が到着階となる。新タワーの展望台は、計画当初と同様、第1展望台が高さ350メートル、第2展望台は450メートルで、第1展望台にはレストランやカフェを併設する予定だ。

商業施設の延べ床面積は23万平方メートルで、物販や飲食施設のほか、オフィスフロアを設ける。オフィスについては、一部ないし全部を一括借り上げするような企業を想定している。また、“和の宿”をコンセプトとした、宿泊施設のみのホテルも用意し、外国人観光客の滞在を狙う。

 このほか、多目的スペースや医療施設を設け、博物館や水族館、美術館の誘致を目指す。また、現在墨田区には大学などの高等教育機関が存在しないが、都市型キャンパスを開設したい大学や専門学校なども誘致したいという。

建設・運営は、新タワーは新タワー社が、商業施設は東武がそれぞれ行う。

経済効果は年間880億円

墨田区が2月8日に発表した2008年度予算案によると、電線の地中化をはじめとする新タワー周辺道路の景観整備や、同区ゆかりの画家・葛飾北斎にちなんだ「北斎館」の整備など、計6億784万円を新タワー関連で計上。08年度は調査・検討の費用で、09年度以降は着工にかかわる予算を計上する。

昨年の計画では、新タワー関連費用は06年度から17年度までの10年間で、78億円だったが、今回は約27億円増の105億7800万円となった。これに、総額23億円の北斎館の建設費用など、関連事業費27億5800万円を加えると、約55億円増の133億3600万円となる。

このうち、08年度から12年度までの5年間は、国土交通省の「まちづくり交付金」制度の利用を視野に入れた。同制度で採択されれば申請金額の最大 40%が交付される。該当する5年間の費用は109億円で、約40億円の交付が見込まれる。しかし、残りの60億円強は区がまかなわなければならず、区債の発行などを行う必要が出てくるだろう。また、現在の費用は初期投資のみの金額で、施設などの運用が始まれば、さらに費用が膨らむ。

一方、7日に行われた区議会の新タワー建設・観光対策特別委員会では、区側から経済波及効果の説明があった。新タワー完成までの建設投資で1496億7000万円、開業後は年間880億円の効果があると見込む。年間来場者数は、新タワーには552万人が、周辺施設には2085万人が訪れると試算。新タワーと街区の重複数を差し引くと、計2096万人が来場すると見ている。

区は事業会社に出資する?

今回の予算案では、新タワーを運営する事業会社「新東京タワー」への出資には触れられていなかった。現在、新タワー社の資本金4億円は、東武が全額出資。山崎昇・墨田区長は、2006年3月の新タワー建設予定地決定の会見では、出資に前向きな姿勢を見せていた。この点について山崎区長に尋ねると、

 「今後、新タワー社が資金(調達)のスキームを作られると思う。その中で、発言権を確保する意味では要請があれば検討する。ただ、今のところ東武から要請がない。資本参加をしていた方が、行政としても意見が通りやすいと思う」

とのことで、東武側の出方にもよるが、前向きな姿勢に変わりはなかった。

また、山崎区長はかねてより「下町文化の創世拠点」としての開発を東武側に呼びかけてきた。「単なる事業経営という視点だけの開発では困る。(都内の)六本木や汐留などと差別化しないと、お客さんは来ませんよと盛んに言っている」と注文を付けた。

区長の要望に強制力はないのでは? と尋ねると、「これまで一緒に協力してやってきたんだから、聞くところは聞いてもらわないと。行政の責任として、もの申すところは申して実現したい」と述べ、テナントなども下町文化が感じられるようにしてもらうよう、要請を続けるという。

山崎区長が東武側を牽制する一方、墨田区役所内では、新タワー推進事業など4つのプロジェクトについて、同庁初となる庁内公募制度を実施した。応募資格は、係長級と一般職員で職種不問で、応募は所属長を通さず直接希望の部署に行った。公募制を導入することで、新タワーで地元を活性化したいという、熱い思いを持った職員を中心に取り組みたいという。

今後、墨田区と東武の間に行き違いが生じないかが、新タワープロジェクト成功のカギを握っていると言えよう。

東武「スーパーなどの大型施設は入れない」

2月13日、墨田区内で行われた新タワー連絡会に、東武と新タワー社の担当者が参加した。同連絡会は、新タワーが建設される押上・業平橋駅周辺地区の29町会・自治会を対象に、同区が2007年11月に発足させた。

 東武側は、商業施設にスーパーなど大型店舗を入れる予定はないこと、宿泊施設は宿泊に特化したものになることなど、地元商店街と共存できるような商業施設にすることを強調した。施設に入るテナントの決定は、2年後位を目安に検討をしているという。

参加した町会関係者からは、商店街とのかかわり方や、新タワー完成後に狭い道を大型バスが通ることへの不安など、具体的な施策を尋ねる質問が多かった。

これに対して、東武側では事前に商業施設の店舗構成を説明することや、新タワーへの大型バスの出入りは予約制にするとして、理解を求めた。

◇

新タワー周辺は道幅が狭い道路が多い。主要道路の拡幅を行うだけでは、大幅に増える交通量に対処しきれないと見られる。鉄道会社である東武側では、鉄道利用を呼びかけるが、これだけでは解決できないだろう。恒久的な渋滞に巻き込まれるのでは、住民の理解は得られない。

商店街との関係も、押上駅の地下から直接新タワーに出入りできるので、来場者が周辺地域を訪れるかは未知数だ。商店街側の自助努力はもちろんのこと、東武側からも回遊性を向上させるプランを打ち出せるかが、周辺地域の発展に寄与するタワーになるか否かの分かれ目になるだろう。

写真1:タワーのイメージ図(提供:東武鉄道)
写真2:新タワー建設地は多くの鉄道が乗り入れる交通の要衝(作成:小長谷祐介)
写真3:新タワーを挟み、商業施設が建設される(作成:小長谷祐介)
写真4:山崎区長は「六本木や汐留などと差別化しないと、お客さんは来ませんよ」と東武側に提案しているという=2月8日、墨田区役所で(撮影:吉川忠行)
写真5:地元町会からは東武側に具体的な説明を求める声が出た=2月13日、東京・押上で(撮影:吉川忠行)

■関連リンク
ライジング・イースト・プロジェクト(新東京タワー)
墨田区
まちづくり交付金(国土交通省)

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初出:2008年02月14日20時54分 吉川忠行/オーマイニュース

2008-09-22

「すみだ大好き人間」を区民が育てた

早大、新タワーの地・墨田区で産学官連携の協定更新

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

新東京タワーの建設予定地を擁する東京都墨田区(山崎昇区長)と早稲田大学(白井克彦総長)は25日、産業振興やまちづくりなどの幅広い分野の産学官連携協定「包括的事業連携協定」を更新したと発表した。同協定は2002年12月に締結され、2期目の今回は07年12月24日から12年12月23日までの5年間となる。

文科系も含む包括的な連携

 一般的に大学と自治体の「産学官連携」は、産業や人材育成など個別の分野での連携が多い。地域の活性化に大学が全面的に連携する協定は、2002年の締結当初は全国的に例のないものであった。更新された同協定では、以下の5分野で協力するとしている。

1. 産業振興
2. 文化の育成・発展
3. まちづくり
4. 人材育成
5. 学術

また、学問の分野でも理科系の印象が強いが、同協定では文科系分野も含まれている。

1期目では、早大との特許の共同出願や中小企業の経営改善、ものづくりの強化、区外の人に墨田区の歴史や文化を紹介する「すみだ学」を早稲田大学のオープンカレッジで行うなど、理系・文系を問わずさまざま分野で成果が収められた。また、第1期で着手した観光拠点を巡る次世代モビリティ(移動体)の開発は、2期目も継続して行われる。

すみだにハマッた学生が区内に就職

 産学官連携の一環として始まった「地域経営ゼミ」(友成真一・同大大学院教授)では、墨田区を活性化するプランの企画や提案ではなく、実際に同区や区民を活性化することを求めている。また、必ずしも1年で成果を求めないのも特徴だ。

同ゼミでは5年間で125人の学生が区内をフィールドに学び、すみだ好きが高じた2人が区内のベンチャー企業と同区役所に就職した。

5期目の今年は、昨年までにゼミを受講した学生を中心に、区内の中小企業が制作した商品を「モノ」ではなく、作り手がモノに込めた「ストーリー」に光をあて、学内の生協で1カ月にわたり販売する「モノ売り、やめました」(関連記事)プロジェクトが行われた。

友成教授は5年間を振り返り、「多くの区民と接することで、すみだを好きになった125人の学生が全国・全世界に散らばった。彼らは自分のビジネスなどで、すみだをいろいろな世界とつなげていくでしょう」と、最大の成果は「すみだ大好き人間」を区民が育てたことだと語った。

ちなみに記者は同ゼミを昨年から取材してきたが、すみだの人と学生双方から「活性化」させられた。そうでなければ、新東京タワーの建設予定地問題が一段落した現在も、墨田区という一つの地域を取材し続けることはなかっただろう。

今度の5年間をどうする?

 連携2期目の期間中の2011年には、高さ610メートルの新東京タワーが完成予定の墨田区。同区には、東京23区で唯一大学や短大などの高等教育研究機関がない。早大との連携を深めることで、魅力ある地域作りを行い、従来同区の産業の中核であった製造業に加え、観光産業なども強化していく方針だ。一方、早稲田大学では来年4月を目処に同区との産学官連携専任の教員を準備する予定という。

25日に墨田区役所で行われた記者会見の席上、山崎区長は5年間を振り返り、「タネはまけた。次の5年で花を咲かせたい」と述べた。

早大の地元である高田馬場でも昔ほど住民と学生が親密ではないと指摘する白井総長は、学生が区内で学ぶ時間が短い中で、「2人の学生がここ(墨田区)を仕事場として選んだことは大きい。人作りというのはものすごく大きい成果だ」と地域活性化における人材育成の大切さを語った。

 次の5年間に学生へ何を求めるかを尋ねると、山崎区長は、「区内にいると墨田区の強みと弱みがわからない。全国から集まった学生に率直に言ってもらうことが新鮮。いろいろな提案をして欲しい」と語り、白井総長は、「地域の問題について(区民と学生で)お互いできることがわかってきた。学生の方が(区民より)若干時間もあり、若さ故の情熱もある。今までの5年間でベースとなる信頼関係ができてきた」と述べ、双方の信頼関係が築かれた上でこそできるプロジェクトの実現に期待感を示した。

墨田区と早稲田大学では、2008年1月19日に墨田区役所に隣接する「すみだリバーサイドホール」で、ロボット操作や燃料電池車の体験コーナーなどを設けた連携5周年の記念イベントを開く。午前10時から午後4時半までで、入場無料。

写真1:包括的事業連携協定を5年間更新した墨田区の山崎区長(左)と早稲田大学の白井総長=12月25日、東京・墨田区役所で(撮影:吉川忠行)
写真2:最大の成果は「すみだ大好き人間」を区民が育てたことと語る友成教授(撮影:吉川忠行)
写真3:「学生からいろいろな提案をして欲しい」と語る山崎区長(撮影:吉川忠行)
写真4:「2人の学生が墨田区を仕事場として選んだことは大きい」と話す白井総長(撮影:吉川忠行)

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墨田区・早稲田大学産学官連携事業
墨田区
早稲田大学

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初出:2007年12月26日05時00分 吉川忠行/オーマイニュース

2008-09-20

どうなってるの?東京タワーと新東京タワーの関係って

放送局側は「6社歩調合わせて検討」

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

東京タワーを運営する日本電波塔(東京都港区、前田伸社長)は、NHKと在京民放5社に対し、地上デジタル放送(地デジ)への完全移行後も東京タワーの利用を続けて欲しいと、9月21日、協議を申し入れた。在京6社は、墨田区に建設予定の高さ610メートルの新東京タワーへ、くら替えを予定している。

これに対して、新しい東京タワーを建設する予定の東武鉄道の事業会社「新東京タワー」(東京都墨田区、宮杉欣也社長)は9月28日、新東京タワーの施工者を大林組に決定したと発表した。

建設予定地では、10月6日に光でタワーを表現するイベントが地元有志によって催された。10月第2週からは、大林組により工法を確かめるために試験杭(くい)を打つ作業が建設予定地で始まっている。2008年の新タワー着工に向けた準備が進むなか、いったい東京タワーと新東京タワーの現状はどうなっているのだろうか?

東京タワーは333メートルから360メートルへの改修計画

今回、日本電波塔が発表した計画は、東京タワーの全高を現在の333メートルから360メートル程度にし、地デジ用アンテナの取り付け位置を80~100 メートル高い位置へ移設する、というもの。また、敷地内に送信所を新築し、タワーの改良費40億円と送信所の新築費35億円の計75億円を自社負担する。賃料についても、現在の価格より抑えるという。

 これはテレビ局にとってはオイシイ話だ。なぜなら、現在、最大の稼ぎである広告売上が、消費者金融の出稿削減やインターネットなど他媒体との競争激化で、減少傾向にある。そのなかで、地デジ用の送信設備費用を丸抱えしてもらえることになるからだ。反面、今まで進めてきた新タワー向けの設備整備を見直す必要がでてくる。

計画そのものは、04年に在京6社が新タワー構想を発表した直後に、日本電波塔が提案していたもの。それを9月に公表した理由について、同社の高村啓之・総合企画課長補佐は、「東京タワーの強度面の安全性、地デジの受信エリアなど、調査結果がまとまったからです」と話す。

高村課長補佐によると、総務省が求める2011年初頭から、地デジに完全移行する同年7月までに、アナログ放送と同等の受信エリアをカバーしなければならないという条件は、東京タワーで満たせるという。送信アンテナの位置が変わる新タワーと異なり、家庭などに設置されている受信アンテナの位置は現在のままで良いため、電波障害対策費がほとんどかからない点もメリットだ。また、1958年の竣工から来年で50年を迎えるが、強度の調査をした結果問題がないという。

記者が以前入手した資料では、千葉県君津市にバックアップ用の小型タワーを建てる計画があった。川田正宏・総合企画部長によると、「現在では各放送局さんが自前でバックアップ施設を持たれているので、不要になりました」とのことで、東京タワーの改修と送信所の新設のみで、新東京タワーに対抗できるようだ。

放送局の反応は?

東京タワーの破格ともいえる改修計画の発表を受け、放送局側はどう考えているのだろうか。

10月4日に行われた、橋本元一・NHK会長の定例会見要旨によると、「できるだけ視聴者に迷惑をかけないように、NHKと民放各社が歩調を合わせ、統一した考え方で進めていくことが基本」と、記者からの質問に応じている。

一方、民放の君和田正夫・テレビ朝日社長や豊田皓・フジテレビ社長も定例会見でこの質問に答えている。君和田社長は、「1社としてどちらがいいとは今申し上げにくい状態。日本電波塔からの協議申し入れについても、6社として対応していきたい」と回答。NHK、民放ともに在京6社で協調して協議を行っていく姿勢を示した。

新東京タワーは金銭面で折り合いつかず?

「報道ではいろいろ言われていますが、大枠では放送局側と調整はとれていますよ」。ある関係者はこう語った。「いろいろ言われている」というのは、新タワーの事業主体「新東京タワー」と放送局との間で、賃料など金銭面で折り合いがつかないと報じられていることだ。こうしたすれ違いは、建設予定地が決まった当初から見られていた。

 新タワーの建設予定地が墨田区に決まったのは、2006年3月31日。放送局側が開いた説明会で配られた資料には「最終候補地」と記される一方で、東武側の会見では「建設地」と断定的に書かれていた。

この微妙な温度差について、当時、東武側の会見に出席した山崎昇・墨田区長に訪ねたところ、このような答えが返ってきた。

「放送局側からは、最終決定したが東武・行政と3者で今後協議しなければならないことがある、と話があった。後ろ向きな協議はあり得ないので『最終候補地』は『建設地』であると思う」

建設予定地の表記が異なるほかに、建設費の負担についても見てみよう。新タワーの建設費用は500億円と発表されている。この500億円は2006年5月設立の新タワー社が負担するが、今のところ、同社への出資企業は親会社の東武のみ。東武は2006年5月、2016年満期でユーロ円建ての転換社債型新株予約権付社債(CB)を発行し、最大で500億円を調達した。

一方で、「事業について発言権を確保する必要はあるかと思うので、株主になるのも方策」(山崎区長)と、当初、出資に前向きな姿勢を見せていた墨田・台東両区では、今のところ新タワー社への出資の話は進んでいないようだ。地元関係者によると、区議会でも出資に関する話は出ていないという。

前出の関係者は現状についてこう語る。「(タワーができる2011年は)4年も先ですからねぇ。タワー周辺の商業施設に出店するとか、出資するなどの判断は、今の段階では企業として難しいんじゃないですかね」。

 しかし東武は「国内有力企業に加え、放送局にも出資を求める」と前述の会見で説明していた。“国内有力”企業はさておき、建設予定地が決定して1年以上も交渉を行っているのに、放送局側が出資の姿勢を見せていない点は疑問が残る。

「大人の話として、(放送局側が)建ててくれと言っておいて、東京タワーが安いから新タワーはやめます、というのもないでしょう」。地元関係者はこう読むが、真相はまだわからない。最近の動きで公になっていることと言えば、新東京タワー社が、9月中旬に環境アセスメントの住民向け説明会を、墨田・江東・台東の3区で開いたことくらいである。

東武にとっては巨大プロジェクトであるため、進ちょく状況がわかりにくい点は致し方ない面もあるだろう。しかし、東武側がプロジェクト名「Rising East Project」(ライジング・イースト・プロジェクト)を発表したのは昨年の10月。

周辺地域の発展に寄与するタワーを目指すならば、もう少し具体像が見えてきても良さそうなものと感じるのは、記者だけだろうか。

写真1:地デジのフルパワー放送を記念してブルーにライトアップされた東京タワー=05年12月1日、東京・六本木で(撮影:吉川忠行)
写真2:2006年11月に東武鉄道が発表した新東京タワーのイメージイラスト(提供:東武鉄道)
写真3:新東京タワーの建設予定地=9月4日(撮影:吉川忠行)

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東京タワー
ライジング・イースト・プロジェクト(新東京タワー)

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初出:2007年10月23日11時45分 吉川忠行/オーマイニュース

2008-09-19

モノ売り、やめました

早大「地域を経営するゼミ」×生協×墨田区

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

モノに込められたストーリーを買ってください──。そんな一風変わった販売コーナーが、10月1日から東京・西早稲田の早稲田大学生協「コーププラザ ライフセンター」(石幡敬子店長)に設けられている。棚にはコットンマフラーやフォトスタンド、本のしおりなど、墨田区内の中小企業が製造・販売を手がける7社10品の“モノ”が並ぶ。

 ストーリーを紹介するのは、同区の地域活性化に取り組む「地域を経営するゼミ」(地域経営ゼミ、友成真一・同大学大学院教授)の学生たち。彼らはなぜ、“モノ売り”をやめたのだろうか。

なぜ生協で売ることに?

早稲田大学と墨田区は、2002年12月から産業に加え、教育やまちづくりなど包括的な産学官連携に取り組んでいる。産業以外の分野を含めた産学官連携は、全国初の試みで、地域経営ゼミは今年で5年目に入った。

各学部から学生が集まる同ゼミの特徴は、必ずしも1年間で成果を求めず、ゼミを終えてからも同区の活性化に取り組んでいる学生が多いことだ。

モノ売りをやめた学生は、過去にゼミを受講し、現在はゼミの活動を先導する「コーディネーター」と呼ばれる役割を担う学生6人と、今年のゼミ生有志。コーディネーターの中には、4年間ゼミにかかわり続けている学生もいる。

生協に販売コーナーを設置するきっかけとなったのは、1月に、5円玉に矢形の木を通すパズル「矢れば出来る」が、受験生などに人気だったからという。墨田区内の中小企業「工房いるか」が製造し、生協に販売委託したものだ。

このとき石幡店長が、大学の産学官連携担当の職員から、ゼミと墨田区の中小企業とのかかわりについて聞いた。そして石幡店長が、1月末に墨田区の中小企業センターに、コーナー設置を提案。新年度に入って、墨田区の同センターの担当者が、ゼミの学生に話を伝え、出展企業選びが7月ごろから始まった。「早大生協が大学のゼミと共同で販売コーナーを設けるのは初の試み」と石幡店長はいう。

こうして学生たちは、ゼミで毎年訪問して顔なじみの「工房いるか」をはじめ、墨田区内の中小企業の魅力をどう伝えるかを考えることになった。その結果、作り手や売り手が製品に込めた「ストーリーを売る」プロジェクトが始まった。

モノのストーリーを知ってもらうには

取り扱っている7社10品目の製品は、学生が以前から訪れている店や企業などが中心。1人の学生が2品ほど担当し、ストーリーをまとめた。ゼミで作る人に会う中で、製品ができるまでの話を聞いて欲しくなったものや、いつも店先で見かけるものなどを中心にセレクトした。

 ニューヨーク近代美術館「MoMA」でも取り扱いのあるペーパーフォルダー(楓岡ばね工業)や、サッカー好きの人が作ったサッカーTシャツ(FLAGS)、ひとつひとつデザインが異なる本のしおり(丸ヨ片野製鞄所)など、どれもが作り手の思いが詰まっているものばかり。

中には肌着店「肌着の大和」のロングトランクスのように、学生が店を訪れるたびに「いつも店先に飾ってますね」と店主に言ってしまうほど、彼らにおなじみの製品もある。

各製品の仕入れ品数は、10から20づつ。本のしおりは初回の20枚が完売し、追加発注した。出展企業側は、売れることよりも製品を知ってもらいたいという気持ちが強いという。

今回のプロジェクトを早大生に知ってもらうために、学内でのリアルな口コミ以外にも、メーリングリストを作ったり、ミクシィの各学部のコミュニティーにプロジェクトの情報を流したり、ネット上でも活動を行っている。授業後も教室に残り、店頭の飾り付けや告知方法の改善策などを夜遅くまで相談している。

プロジェクト終了後の企画も検討している。今回製品を買ってくれたり、興味を示してくれた人たちとはミクシィを通じて関係を持続したり、1度製品を作った人に会ってもらう「すみだツアー」なども行いたいという。

「私は学生さんと何回も打ち合わせをして、彼らから製品の良さを聞いてストーリーを知ることができました。店頭の飾り付けやメールでの告知も大事ですが、やっぱりゼミの学生さんから話を聞くのが一番伝わってきますね。単におもしろいもの、良いものを売っているのではなく、(地域活性化の)研究としてやっていることや『すみだの良さ』などを語って欲しいです」と石幡店長。製品やその企業の良さをわかっている学生が、今以上にストーリーを語ることへ期待を示した。

「財布のひもは堅いです」

現在の悩みは、売り場で足を止める人は多いが、なかなか購入までに至らないこと。メンバーの一人、商学部4年の松林さやかさんは、「販売を始める前はもっと売れると思っていました。でも、財布のひもは堅いです」と感想を語る。ゼミ生からは「生協では日用品じゃないと買いにくいのかも」という意見も出ている。店頭で「すみだの良さ」を伝えるのは簡単なことではないが、学生たちの墨田区の企業への気持ちは熱い。今後は店頭でもストーリーが伝わるように工夫を重ねていきたいという。

販売コーナーは31日まで。あなたも学生たちの熱いパッションを感じてみませんか?

写真1:モノを売るのではなく、ストーリーを売る「モノ売り、やめました」のコーナー=12日、東京・西早稲田の早稲田大学で(撮影:吉川忠行)
写真2:5円玉に矢形の木を通すパズル「矢れば出来る」(撮影:吉川忠行)

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モノ売り、やめました(mixiのコミュニティー)
早稲田大学生活協同組合
墨田区・早稲田大学産学官連携事業
すみだ中小企業センター

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初出:2007年10月16日06時20分 吉川忠行/オーマイニュース

2008-09-18

新タワー、いくらだったら来てくれる?

墨田区長と早大生が討論会

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

高さ610メートルの新東京タワーの建設が予定されている墨田区で11日夜、山崎昇・墨田区長と早稲田大学の学生が地域活性化について議論する討論会「墨田区役所を裸にする ~区長とのディスカッション~」が行われた。

 墨田区では早稲田大学と2002年12月に締結した事業連携協定に基づき、地元の中小企業も交えた地域活性化の産学官連携に取り組んでいる。この連携の一環として「地域を経営する」をテーマにした友成真一・同大学大学院(環境・エネルギー研究科)教授の「地域経営ゼミ」が、03年4月から同区内で行われている。例年2倍から4倍の競争率となる人気ゼミだ。

ゼミにはさまざまな学部から学生が集まり、地域がもともと持っている良さや特色、人材などの資源を活用し、地域の価値の最大化に取り組む。必ずしも1年間で成果を求めずに、長期的な視野で地域活性化に取り組むのが特徴で、ゼミ終了後も何らかの形で墨田区に関わる学生も多い。地域を活性化しようとすることで学生自身が活性化し、それを再び墨田区という地域に還元しているともいえる。

今年で5回目を迎えた討論会では、山崎区長と20人超の学生が討論を繰り広げた。「今後商店街を地域活性化にどう活用するのか」「消防車が入れない地域の防災対策は」など区政に関するものや、理想のリーダー像、新東京タワー関連など、さまざまな質問が学生から出された。区長から学生に問いかける場面もあり、予定の1時間を20分近く超えて議論が行われた。

新タワーと「お年寄りのコミュニティー」の矛盾?

政治経済学部2年生の鵜木彩さんから「区長が20歳に若返ったら区内のどこでデートをしますか」と問われると、山崎区長は、「そこが墨田区の問題。もう少し若い人に来てもらえるまちづくりをしていかないと発展しない。(2011年に)新タワーができれば、(東京タワーより200メートル高い)450メートルの展望台から2人で夜景を見ようとなるかもしれない」と答えたところで、山崎区長が「いくらだったら、新タワーの展望台の入場料がいくらだったら行きますか? ひとりじゃなくて2人だよ」と鵜木さんに逆質問。

「東京タワーだと途中で(大展望台820円に加えて600円の)特別展望台のお金を払わなければならないので、一番上まで行けて1人1200円くらいだったら行きたいです」(鵜木さん)

と答えると、山崎区長は思わずニンマリ。家族5人で来る人も考えると「全員で1万円になってしまう2000円は高いと思う」と、新タワーの事業主体である東武鉄道に持論を唱えている山崎区長にとっては、参考になる一言だったようだ。

山崎区長は新タワー建設後のまちづくりについて、「新タワーを中心に回遊してもらえる『江戸下町の庶民文化』を体感できる街を作りたい」と語り、六本木や表参道とは違った、地域の特性を生かしたまちづくりの方針を強調。また、商店街の活性化については、お年寄りのコミュニティーの中心となるようにしたいと語った。

これに対し、学生からは「商店街がお年寄りのコミュニティーの中心というが、新タワーができたら周辺商店街や地域が衰退するのでは」との厳しい意見も出た。山崎区長は、「ファッショナブルな街を望む人とは違い、下町や路地が好きな人を誘導したい」と答えたが、下町の魅力が何なのかなど、踏み込んだ返答には至らなかった。

「下町の良さについてもっと聞きたかった」

 討論会終了後、もっとも区長が良いと感じた質問「ベストクエスチョン」に選ばれたのは、前述の鵜木さん。今日の感想を尋ねると、「区長は質問しやすい人でした。街を好きになるのは人から好きになるのだと思います。ただ、新タワーだけではなく、下町の良さについてもう少し聞きたかったです。私は下町が好きなのですが、そういう部分を(観光地として)押しても良いのではと思いました」と語ってくれた。親の転勤で「地元」がないという鵜木さんは、墨田区を知ることで現在自分が住む街を見直していきたいという。なお、新タワー以外の墨田区の魅力を知りたかったという声は、他の学生からも多く聞かれた。

友成教授は討論会後の講評として、「コミュニティーやリーダーシップの話になったのは良かった。ただ、議会で毎日問われるようなマクロな質問ではダメ。新タワーによる経済活性化の先に何があるのかといった答えが、区長から出て欲しかったですね」と5回目を迎え、学生からの質問にそつのない回答をするようになった区長には、より墨田区に深く入り込んで、鋭い質問を用意する必要性があると学生に説いた。

同ゼミでは墨田区内での実地研究を重ね、来年1月に区内で行われる予定の住民や商店主向け報告会で研究成果を発表する。

写真1:11日夜、東京の墨田区役所で行われた墨田区長と早大生の討論会(撮影:吉川忠行)
写真2:学生からの質問に答える山崎昇区長(撮影:吉川忠行)
写真3:「ベストクエスチョン」に選ばれた鵜木彩さん(撮影:吉川忠行)

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(早大「地域を経営するゼミ」×生協×墨田区、07年10月16日)

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墨田区・早稲田大学産学官連携事業
墨田区
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初出:2007年10月12日06時06分 吉川忠行/オーマイニュース

2008-09-15

祝! 復活30回記念の隅田川花火大会

2万2000発が夜空を彩る

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 夏の風物詩となった隅田川花火大会(同実行委員会主催)が28日夜、「新東京タワー」の建設地に決定した墨田区と、浅草に代表される台東区の間を流れる隅田川で行われた。30回記念の今回は、昨年より2000発多い2万2000発の花火が打ち上げられ、色とりどりの大輪の花が夏の夜空を彩った。

隅田川の花火は、1733年5月に行われた水神祭の際、疫病による死者の慰霊と悪疫退散を祈願して花火が打ち上げられたことを起源とする。第2次世界大戦、そして戦後は交通事情の悪化で1961年を最後に中断していたが、78年に復活し、今回で30回目を迎えた。

花火大会は午後7時10分に「祝30回隅田川花火大会」と題したスターマインと速射スターマイン計1614発の打ち上げでスタート。「この花火大会は立ち止まって見ることができません」、「写真を撮っている方は1枚撮ったら進んでください」──。隅田川に架かる橋は交通規制が実施され、警察官が立ち止まろうとする観客に移動を促した。

また、隅田川には屋形船が30艘(そう)ほど浮かび、大輪の花が夜空を焦がすと、船上からビール片手に花火見物する人と橋上から見物する人から大きな歓声が上がった。

大会のフィナーレでは、「千紫万紅 隅田の花嵐」と題し、計6000発のスターマインがラスト5分間に第1・第2の2会場から3000発ずつ打ち上げられ、記念大会を盛り上げて締めくくった。

今年は翌日が参院選の投票日と重なった。このため、同実行委員会では6月下旬に「100万人近い観客を整理誘導する安全対策面で区や警察など関係機関が十分な体制をとれないことや、交通規制区域内の投票所で円滑な投票に支障が出る」として、雨天の場合は順延せずに中止することを決定していた。

写真:復活30回を記念して2万2000発の花火が夏の夜空を彩った隅田川花火大会=28日、東京・隅田川で(撮影:吉川忠行)

◆

初出:2007年07月28日21時20分 吉川忠行/オーマイニュース

2007-03-01

新東京タワーの取材

私が新東京タワーの取材を始めたのは、2005年1月のことでした。
当時は我々ニュースセンターが04年12月に発足してから1カ月。2月からの本格稼働を目前に、試験的に記事を出している時期でした。

最初の記事は池袋の誘致集会のレポートです。
豊島区のホームページか何かで、1月下旬に池袋で誘致集会があることを知り、大学で池袋東口の研究をしていた私は、新たな池袋研究のネタにもなると思い、集会に足を運んでみました。

新東京タワーの存在を最初に知ったのは、1990年代後半のことです。
当時は、秋葉原に建てるやら、浅草が立候補しているやら、東京タワーの隣に建てるやら、浮かんでは消える候補地の名を新聞で眺めていました。現在の高さ600メートルの地上波デジタル(地デジ)放送用新タワーのプロジェクトがスタートしたのは2003年で、その当時はあまり関心がなかったというのが正直な感想です。

このたび、ライブドア・ニュースの独自報道部門の廃止に伴い、私が取材・執筆した計49本の記事を自分のブログに掲載しました(“新東京タワー”のタグでまとめてます)。
これは仮にオリジナルデータが消失した場合でも、後々新東京タワーについて研究する方などのお役に立てればとの思いで、自分で管理しているサイトに再掲した次第です。

私自身、これからも機会があれば別の媒体で新東京タワーのことを書き続けられればと考えています。

新タワーは地域のDNAになるか

特集・地域活性化は誰のために 最終回

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 下町情緒あふれる街並みが残る東京・墨田区。2011年完成予定の新東京タワーの建設地に決定したことで、同区は従来の製造業中心から観光都市への脱皮を図る。地元では新タワーの誘致成功を歓迎する声が聞かれる一方、「潤うのはタワーの建つ再開発地域の中だけ」との声も聞かれ、建設地周辺まで波及効果が及ぶのか、疑問視する見方も根強い。

同区は新タワー誘致前の03年から、早稲田大学と産業に加え、教育やまちづくりなど包括的な産学官連携に取り組む。産業以外の分野を含めた連携は、全国初の試みだ。この一環として、地域経営ゼミ(友成真一・同大理工学術院教授)では、同区を舞台に必ずしも一年間で成果を求めず、長期的な視野で地域活性化に取り組んでいる。4年目を終えた同ゼミの狙(ねら)いを、友成教授に尋ねた。

学生は教授のコマではない

「墨田区を活性化するのが最大の目的ならば、これほど非効率なことはないですよね(笑)」。学生に自主的な活動を求める同ゼミで、一年間で成果を求めない点を尋ねると、同教授はこう答えた。教授が施策を示し、学生が実行する──。これが従来大学が行う地域活性化の手法だった。しかし、短期で結果を出せたとしても、本質的な問題解決に至らないことが多い。「短期で“結果”を求めるなら学生をコマとして使うだけになる」。

同教授は、地域活性化を経営の視点でとらえる。「経営の本質は原因を作り続けること。原因に目を向けなければ、世の中が求める“結果”は生まれない」と、変化が生じる本質的な“原因”を同区で作っていきたいという。商店街の“復活”を、ビジネスとして成功させるならば、学生はコンサルタント会社に勝てないであろう。大学が地域と関(かか)わる意味を「物事の本質を追究するのが大学だから」と同教授は考える。

自分自身に活力や考え方の変化が生じないと地域を活性化できない、と同教授は見る。ゆえに「非効率」でありながらも、学生と活性化のタネ(原因)をまき続ける。

「年々本質に向かっている」

自主的なゼミの活動を先導するのが「コーディネーター」と呼ばれるかつて受講した学生たちだ。

コーディネーターたちは、ゼミ生たちを牽引(けんいん)しつつ、「キラキラ探偵団」(前回参照)など、自らのプロジェクトも手がけた。同教授は、年々プロジェクトが、人の心に変化を生じさせる「地域活性化の本質的なこと」に向かっているという。前年の経験を生かして活動するコーディネーターの存在が、その一因であるのは間違いない。

新タワーを地域のDNAに

新東京タワーの建つ墨田区では、周辺地域の整備計画が着々と進行している。しかし、観光の目玉となる大型施設の誘致に成功しつつも、徐々に客足が伸び悩んだ地域も多い。2001年に負債総額3261億円と第3セクターでは過去最大規模となり、会社更生法の申請に追い込まれた宮崎県の大型リゾート施設「宮崎シーガイア」など、地域活性化の夢が破れた例は枚挙にいとわない。

同区が同じ轍(てつ)を踏まない策を尋ねると、同教授は「タワーが建つ前から活用すること」を提案。「建設前から開業後まで、(タワーを建てる)東武鉄道や放送局以外に地域の人が関わり続けないと、新タワーという地域の “資源”を最大限に活用したことにならない」と指摘する。新タワーが地域のDNA(遺伝子)になりうるかが成功のカギだ。

地域活性化は、自治体でも事業を行う企業でもなく、街に住む人のために行うものである。大型施設に依存する従来の方法から、人を中心とした方法に転換することで、長期的に成果が見込める、住人のためになる地域活性化が行えるだろう。新東京タワーは、その好例になれるだろうか。

◆ともなり・しんいち: 1954年大分生まれ。京都大学・大学院工学研究科修了後、80年通商産業省(現・経済産業省)入省。資源エネルギー政策、技術政策、中小企業政策、通商政策を手がける。86年在イラク日本大使館、93年JETROニューヨークセンター技術調査員、96年通産省ロシア東欧室長、2001年国土交通省企画官を経て、02年より現職。「真実は現場に生息する」、「一点突破」、「家族第一」が信条。

【了】

写真:「短期で“結果”を求めるなら学生をコマとして使うだけになる」と語る友成教授(撮影:吉川忠行)

■特集・地域活性化は誰のために(地域経営ゼミ後期特集─全4回)
第3回 商店街が子どもを育てる!(07年01月27日)
第2回 高校生とまち歩きで地元再発見(07年01月26日)
第1回 新タワーで街は幸せになる?(07年01月24日)

■連載・新タワー候補地を"経営"する(地域経営ゼミ前期特集─全4回)
第4回 新東京タワーを建てる意義は?(06年07月28日)
第3回 学生それぞれの「すみだ」(06年07月27日)
第2回 デザインは相手への思いやり(06年07月26日)
第1回 なぜ新東京タワーを誘致した?(06年07月25日)

◆

初出:2007年01月28日11時50分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

2007-02-26

新東京タワーは誰のために建つ

特集・新東京タワー 夢と現実の狭間で 最終回

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 地上波放送がデジタル方式(地デジ)に完全移行する、2011年に完成予定の新東京タワー。新タワーの建設地に決まった墨田区が誘致を行ったのは、高度成長期に同区の財政を支えた製造業の地方や海外への流出に危機感を抱いたからだ。製造業に加え、観光を中心産業として育成していく方針を打ち出した同区は、 05年2月に東武鉄道とともに新タワー誘致に名乗りを挙げる。候補地はさいたま新都心など15にのぼったが、06年3月には建設地の座を勝ち取った。

建設地に決定した理由の一つとして、事業主体と建設用地が明確であったことが挙げられる。同区は04年11月に、山崎昇区長が区議会本会議で誘致の意思表明を行い、同年12月には同区と地元関係者が東武へ協力要請を行った。06年3月の決定後、東武は資本金4億円を全額出資する事業会社「新東京タワー」を東武本社内に設立。同社は現在、放送事業者との協議の窓口となり、新タワー事業の計画策定を行っている。

なぜ東武が名乗りを上げたか

 ここ数年東京で行われた再開発は、六本木や汐留、表参道など西部の街がほとんど。一方、浅草をはじめとする東部の街を見ると、大規模な再開発とは縁遠い状況だ。新宿や渋谷も合わせると、街の勢いは「西高東低」と言える。

東京東部と関東北部が営業基盤の東武では、この状況に危機感を持っていた。東武に限らず、鉄道の通学定期客は少子化により減少しているため、各社は沿線の観光地などを活用して、いかに定期以外の乗客を増やすかに腐心している。

「東京の都市軸が次第に西南方向へ移っていることに大きな懸念を抱いていたが、(東方向に)引き戻すことなど、とても東武一社の手に負えない」。11月に開かれた地元関係者向けシンポジウムの席上、新東京タワーの宮杉欣也社長は、新タワー建設を契機に、地元と一丸となって「西高東低」を是正したい意向を示した。

同社は新タワーの年間来場者数を、初年度540万人、開業後30年平均を270万人と見込む。仮に540万人のうち200万人の大人が、定期外で浅草駅と最寄りの業平橋駅の間を往復で乗車した場合、運賃の合計額は5億6000万円。500億円と見込まれるタワーの建設費は、展望台の収入や放送事業者からの施設利用料で回収できるとしており、東武にとって定期外客の増加は、増収につながる可能性が高い。また、オフィスビルを併設する計画なので、定期券利用者の増加も見込める。

起爆剤で"爆発"するか

 墨田区は9月、新タワー建設地と周辺地域の計35万平方メートルの将来都市像を描いた「まちづくりグランドデザイン」をまとめた。新タワーを起爆剤に同区を観光都市に変ぼうさせるための将来図だ。

現在、建設地周辺は防災面で不安な地域が多い。道路の道幅が狭く、老朽化した木造家屋が密集する地域もある。同区では下町情緒を残しながら、道路整備や建物の不燃化促進などを行う方針だ。また、建設地沿いを流れる北十間川の整備など、地域の特性を生かしたまちづくりを行っていく。

このほか、同区ゆかりの浮世絵画家・葛飾北斎の作品や資料を展示する「北斎館」を区内に建設する計画があり、グランドデザインの対象地域以外でも観光面でてこ入れが行われる。

誰のために建てるのか

山崎昇・墨田区長は、同区のみならず東京東部全体の活性化を掲げて新タワー誘致を行った。7月からは隣接する区の観光担当が定期的に集まり、連携を模索している。

また、山崎区長は5月に行われた早稲田大学の学生との討論会で、良い街の条件として実際に居住している人数を示す「夜間人口」が多いことを挙げた。新タワーで「住みたい街」としての地位も向上させたいようだ。

企業や行政はそれぞれの思惑で新タワーの誘致を行った。いまのところ、両者が地元へ行う説明を聞く限り、単なる観光地づくりで終わらず、恒久的なまちづくりを目指すようだ。しかし、これを実現するには、多くの住民が企業や行政に対し、賛成・反対を含む明確な意思表示を行っていくことが重要だろう。街の主役は企業でも行政でもない。その街に住む人なのだから。【了】

写真上:11月24日に東武鉄道が発表した新東京タワーのイメージイラスト(提供:東武鉄道)
写真中:墨田区が建設地に決定した理由の一つは、東武が事業主体と建設用地の引き受けを表明したこと。写真は業平橋駅から見た東武所有の新タワー建設地=06年3月15日(撮影:吉川忠行)
写真下:業平橋駅周辺は団地の建つごく普通の住宅地だ=06年6月28日(撮影:吉川忠行)

■特集・新東京タワー 夢と現実の狭間で
第2回 新タワーより高い上海ヒルズ展望台
第1回 台北101と新タワーを比較する

◆

初出:2006年12月02日11時30分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

新タワーより高い上海ヒルズ展望台

特集・新東京タワー 夢と現実の狭間で 第2回

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 2008年8月の北京オリンピック開催を控えた同年春、高層ビルの建設ラッシュに沸く中国・上海市で、森ビルが手がける超高層複合ビルプロジェクト「上海ヒルズ」が竣工する予定だ。新タワーより高い展望台を擁する上海ヒルズの工事は現在、高さ70階(約300メートル)部分まで達している。

同社は、1986年のアークヒルズに始まり、愛宕ヒルズ(01年)、六本木ヒルズ(03年)、表参道ヒルズ(06年)と、大規模開発プロジェクトに必ず「ヒルズ」を冠してきたが、初めて海外でこの名称を使う。上海ヒルズがオープンする08年に着工し、11年完成予定の新東京タワーと同複合ビルの展望施設を比較した。

展望施設は新東京タワーより高い

 上海ヒルズの中心となるメインタワー「上海ヒルズ環球金融中心」は、地上101階、地下3階建てで、高さは492メートル。ビルの頂部には台形の開口部が目を引く。472メートルの100階には長さ55メートルの展望廊下を設け、94階には広さ700平方メートル、天井高8メートルの大展望スペースも用意し、年間250万-300万人の来場者を見込む。森ビルでは広さを生かした大型展示も検討しているという。

2008年に上海ヒルズがオープンすると、新東京タワーの完成前に、第2展望台(高さ450メートル)を22メートル上回る「世界一高い展望台」が出現する。新タワーは建物全体の高さでは世界一となるが、観光客が実際に見られる眺望は、わずかな差とはいえ「世界一の高さ」ではない。

新タワーの事業主体である東武鉄道では、展望台よりも建物としての「高さ世界一」を国内外にアピールしていくという。新タワーの基本設計が07年春までに行われることを考えると、同社が第2展望台の高さを変更する可能性は少ない。

高さを競うだけのタワーではない

 「高さはもちろん、美しさや親しみでも世界一になりたい」──。24日のデザイン発表の際に配布された東武の資料には、単に高さだけを競うタワーではないと、開発の方向性が示されている。

タワーの形状は日本刀や伝統的な日本建築に見られる「そり」と「むくり」を意識した。断面図で見ると、足部から頂部に向かって、三角形が円形に連続変化していく構造だ。また、災害時も電波塔としての役目を担うため、奈良・法隆寺の五重塔に見られる制震構造を最新技術で再現するなど、耐震性と耐風性も考慮している。

東武では高さ350メートルの第1展望台に、レストランや店舗などを設ける予定。また、新タワーの目玉となる高さ450メートルの第2展望台外周には、ガラスで覆われた、らせん状の空中回廊を設ける計画だ。

新タワーの年間来場者数は、国内では圧倒的な高さとなる展望台を武器に、初年度540万人、開業後30年平均で270万人を見込む。

単なる観光地を作るつもりはない

東武が全額出資する事業会社「新東京タワー」(東京都墨田区)の宮杉欣也社長は、11月に開かれた地元関係者向けのシンポジウムで「単なる観光地を作るつもりはない」と述べ、周辺地域の発展に寄与するタワーを目指す方針を示した。

同社では新タワーを防災拠点としても位置づけており、周辺にも「下町らしい個性あふれる賑わいを演出した複合施設」を計画している。開業当初のにぎわいが一段落しても、魅力の衰えない施設をどう実現していくかが課題だ。

タワーの高さは世界一、展望台の高さは…。このもどかしさをどう発展的に解決する新タワーが完成するのだろうか。(つづく)

画像上:11月に森ビルが発表した「上海ヒルズ」のイメージイラスト(提供:森ビル)
画像中:上海ヒルズの中心となるメインタワー「上海ヒルズ環球金融中心」の頂部に設けられた台形の開口部(提供:森ビル)
画像下:11月24日に東武鉄道が発表した新東京タワーのイメージイラスト(提供:東武鉄道)

■特集・新東京タワー 夢と現実の狭間で
最終回 新東京タワーは誰のために建つ
第1回 台北101と新タワーを比較する

◆

初出:2006年12月01日16時00分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

2007-02-25

台北101と新タワーを比較する

特集・新東京タワー 夢と現実の狭間で 第1回

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 2011年に開業予定の新東京タワーのデザインが24日発表された。当初の計画と同様、タワーの高さは地上610メートルで、350メートルと450メートルの部分に第1、第2展望台を設置する。第2展望台の外周には、ガラスで覆われた空中回廊を設ける予定で、今後環境アセスメントなどで修正が加えられない限り、新タワーは今回発表されたデザインでお目見えする。

現在、建築物として高さ世界一を誇るのは、553メートルの「CNタワー」(カナダ)だ。アジアでは、508メートルの「台北101」(台湾)が最も高い。建築物のうち超高層ビルに限ると世界一高いビルだ。同じアジアに位置する台北101に、新タワー完成後のまちづくりの手がかりはないか。10月中旬、遅い夏休みを取り台湾へ向かった。

台北の六本木ヒルズ

台北101は2004年に再開発地区「信義計画区」にオープンした。最寄り駅は台北駅から地下鉄で10分ほどの市政府駅。ここから歩いて7分ほどだ。周辺には市政府庁舎や市議会議事堂があり、台北101に隣接する高級ホテル「グランドハイアット 台北」との間には片側4車線の広大な道路が貫く。

展望台は地上382メートルの89階と、同390メートルとなる91階の2カ所。入場料は89階の屋内展望台が350元(1元=4円換算で1400円)、 91階の屋外がプラス100元(同400円)だ。地下1階から地上5階までの低層部は高級ブランド店や食料品店などが入ったショッピングモールとレストラン街、中層部は金融やIT関連企業などが入るオフィスフロアとなっている。

台湾で同地区一帯は「台北のマンハッタン」と呼ばれているようだが、オフィスに入居する業種や高級ホテル、隣接する高級住宅地やコンベンションセンターを見ると、六本木ヒルズや横浜・みなとみらい21地区を思い起こしてしまう。

金色の球は何?

 屋内展望台へは5階のエレベーター乗り場から、世界最速の分速1010メートルを誇る日本製エレベーターでわずか37秒で到着する。日本の高層ビルにある展望台と比べて広々としており、ゆったり景色を楽しめるような雰囲気だ。カフェや土産物店のほか、展望台から国内外へ手紙を送れるコーナーもある。

また、展望台の中心部に入ると金色の球が目に付く。風による振動を抑えるダンパー(チューンド・マス・ダンパー、TMD)だ。直径5.5メートル、重さ660トンと世界最大の大きさで、TMDの周りでは写真を撮る観光客も多かった。

台北の街全体が見渡せる展望台からの眺めはすばらしい。眼下には高級マンション「信義之星」が広がり、西側の窓からは台北駅前のデパート「新光三越」が入る新光タワー(高さ244メートル)が見える。屋外展望台へ出るとかなりの強風が吹いており、ピューピューと風切り音が途切れることがない。

新旧入り交じる街並み

 展望台から見えた富裕層向け住宅地へ向かった。台北101と信義之星の間を通る幹線道路の下では、2011年末開業予定の地下鉄信義線の工事が続いており、最寄り駅の「世貿中心駅」開業後は台北駅方面へのアクセスが向上する。現在住宅地から地下鉄の市政府駅までは20分ほど歩くが、住宅地に近い信義線の開業で、周辺地域の開発が一層加速しそうだ。

信義之星を通り過ぎると突如風景が変わる。低層の古びた建物がひしめく、台北市内でよく見かける下町の風景だ。商店街には「10元ショップ」もあった。台北101からは10分ほどの距離であったが、観光客と思われる人は皆無だった。

新東京タワー建設地の周辺は?

一方、新東京タワーの建設地である「押上・業平橋地区」も、現在はごく普通の住宅地。墨田区が中心となって進める新タワー周辺の「災害に強いまちづくり」では、建物の不燃化促進や生活道路の整備による災害対策に加え、下町情緒を生かした観光客をもてなす街並みづくりを目指す。

また、同区では建設地沿いを流れる北十間川を「水辺拠点」と位置づけ、水質浄化や橋の改修、親水ステージや船着き場の整備などを計画している。新タワーでいかに観光客を呼び込み、周辺の街を活性化できるかが「観光都市」を目指す同区の課題だ。

はたして、どのような風景に変ぼうするのだろうか。(つづく)

写真1:高さ508メートルの「台北101」は、超高層ビルでは世界一の高さ=06年10月18日、台北市で(撮影:吉川忠行)
写真2:展望台中心部にある金色の球は風による振動を抑える「チューンド・マス・ダンパー」=06年10月18日、台北市で(撮影:吉川忠行)
写真3:台北101から10分ほど歩くと下町の風景が広がる=06年10月18日、台北市で(撮影:吉川忠行)

■特集・新東京タワー 夢と現実の狭間で
最終回 新東京タワーは誰のために建つ
第2回 新タワーより高い上海ヒルズ展望台

◆

初出:2006年11月30日12時50分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

2007-02-22

連載・新タワー候補地を"経営"する(4)

新東京タワーを建てる意義は?

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 ものづくりを中心とする街から「ものづくり+観光」の街へ向け、かじを切った墨田区。2011年完成予定の新タワーは「観光都市すみだ」の中心的な役割を担い、強力な集客力を発揮することが期待されている。都内で来訪者が多い街は、新宿や渋谷、表参道など西部地域に集中しており“西高東低”の様相を呈している。墨田区が新タワーを誘致した背景には、新タワーの完成で、同区だけではなく浅草を擁する台東区など、周辺地域との連携で東京東部を活性化したいという思いがある。

一方、新タワー完成で、本当に周辺地域が活性化するかについては、疑問の声もある。建設予定地は押上・業平橋両駅に隣接しており、新タワーを中心とした再開発地域の外にある周辺の商店街に立ち寄る必然性が生じない。地域経営ゼミ(友成真一・早大理工学術院教授)の学生たちは「すみだ」そのものの魅力を引き出すことで、タワーに依存しない地域活性化の道を探っている。

地域の“モノ”や“ヒト”をどう使う?

「地域経営をやりたいと大学側に持ちかけたんです」。友成教授は、同大と墨田区が産学官連携に至ったいきさつをこう振り返る。大学と地域の連携というと、大学を誘致するやり方が思い浮かぶが、地域経営ゼミのように、地域の人たちと学生が関係を築いていくほうが有意義な連携だと話す。

同ゼミでは、来店するだけで客が得をするポイントシステムを商店街で導入するなど、その地域にすでにある“モノ”や“ヒト”をどう利用し、発展させるかを主眼に置き、学生が地域活性化策を検討している。この考え方は、同教授が経営について「持てる資源を最大限に活用し、目的達成を極大化する行為」と定義しているところから来ているようだ。

ゼミが始まって間もない5月、財団法人本庄国際リサーチパーク研究推進機構の佐々木滋生さんは「地域住民がどうしたいかを考慮しないで専門家が絵を作ってしまった」と、従来のまちづくりの問題点を指摘した。地域住民がどういう街にしたいかを、住民自身が提案できるようにしていくのが、今後のあり方ではないかと述べた。こうした失敗を防ぐために佐々木さんは「個人と個人の交流がいかに広まるか」が重要だと語り、友成教授も現場で人と人とが接する「超ミクロの世界」の大切さを強調する。

地域活性化の取り組みは、最低でも5年、10年の単位で考えていく性質のもので、1年間で結果を出すことは不可能に近い。政治経済学部4年の佐々木知範さんは「何かを変えるのは継続性が必要だと思う。せめて波を起こして終わらせたい」と語った。

新タワーを建てて何をしたいのか

墨田区は新タワーを中心とした観光都市の育成を進めている。しかし、同区や事業主体となる東武鉄道と地元の3者で、今後計画が進むにつれて思惑が異なってくる可能性がある。

「新タワーを建てて何をしたいのか」という目標設定が、観光で活性化したいという視点にとどまらず、これをどう掘り下げていけるかによって、新タワーが一時的な観光名所で終わるか、真の意味での地域活性化の起爆剤になるかが分かれてくる。

東京東部の活性化を成功させるためには、形式的な地域と企業・自治体の話し合いではなく、ひざ詰めの議論をしていく必要がある。新タワーのデザイン監修についても、建築家の安藤忠雄氏と彫刻家の澄川喜一氏だけではなく、墨田区にゆかりのあるデザイナーを交えれば、また違った見方が加わり、新タワーと地域の新たな関係性が生まれてくるのではないだろうか。

◇ ◇ ◇

新タワーによる地域活性化が、既存の“箱モノ”による活性化とは違った結果を出すためには、地元地域が持つ資源を最大限に活用し、新タワーを誘致した意義を常に問い続ける必要があるだろう。【了】

写真:「地域経営では地域の資源を最大限に生かすことが大切」と語る友成真一教授=5月25日、早稲田大学で(撮影:吉川忠行)

■連載・新タワー候補地を"経営"する(地域経営ゼミ前期特集─全4回)
第3回 学生それぞれの「すみだ」(06年07月27日)
第2回 デザインは相手への思いやり(06年07月26日)
第1回 なぜ新東京タワーを誘致した?(06年07月25日)

■特集・地域活性化は誰のために(地域経営ゼミ後期特集─全4回)
第4回 新タワーは地域のDNAになるか(07年01月28日)
第3回 商店街が子どもを育てる!(07年01月27日)
第2回 高校生とまち歩きで地元再発見(07年01月26日)
第1回 新タワーで街は幸せになる?(07年01月24日)

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初出:2006年07月28日16時45分 吉川忠行/ライブドア・ニュース