2008-09-21

新東京タワー、大学生ならこう生かす

建設予定地の墨田区でプレゼン大会

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

首都圏の地上デジタル放送の電波塔となる新東京タワー(事業主体:東武鉄道、高さ610メートル)の建設が予定されている東京・墨田区で、「大学・地域の協働による学生まちづくりプレゼンテーション大会」(東京商工会議所など主催)の表彰式が行われた。会場では、参加した7大学13チームのうち、墨田区長賞などを受賞した4大学5チームの学生が発表を行った。

学生プレゼン大会は、2006年に新宿区の四谷を対象地域に1回目が開催された。地域活性化に取り組む大学などの教育機関と連携した、まちづくり支援策の提案を行っている。2回目の今回は、2011年に新タワーの完成が予定されている墨田区が対象地域となった。

審査は、宮下正房・東京経済大学名誉教授を委員長とする9人の委員が、論理の整合性や独自性、計画の実行性などを基準に行った。宮下委員長は「当初は3賞を予定していたが、もったいない提案があり5賞にした」と参加チームの提案を賞賛した。

「新東京タワーは自分たち商店街と関係ない」が8割

 「墨田区長賞」を受賞した東京富士大学(高石光一ゼミ・齋田チーム11人)は、「新東京タワーと地域の融和を目指して~ステップアウト(一歩踏み出し)&スプレッド(拡散)戦略」を発表。商店街が抱える問題を現地で調査した結果、後継者不足や空き店舗の増加、来店者の減少をどう食い止めるかなど、既存の問題点があらためて浮かび上がった。

また、新タワーが建設されることについて尋ねると、「自分たちの商店街と直接の関係がない」という回答が8割近くに達したという。

こうした回答をふまえ、新タワーから200メートル以内に和菓子や洋菓子の名店をそろえた「甘味の城」などの拠点を設置し、周辺地域や既存の観光名所、区内の名店に観光客を誘導するプランを提案した。

この工場は何を作る工場?

「東京商工会議所墨田支部会長賞」を受賞した工学院大学(初田亨ゼミ・川島チーム7人)の発表内容は、「ものづくり都市 すみだ」。ものづくりの街である墨田区には、優れた技術を持つ小さな工場や伝統工芸の工房などが多い。しかし、道路に面した工場のシャッターが閉まっていることが多いため、どのような製品を作っているかがわかりにくい点に着目した。

工場や工房に共通のシンボルマークを作った上で、印刷業や金属製品業など、業種ごとのマークを作ることで、道路からどのようなの工場なのかが看板を見ればわかる提案を行った。

PASMOとの連携視野に「SUMIMO」

 一方、「日本都市計画家協会賞」を受賞した明治大学(山本俊哉ゼミ・大串チーム3人)は、緑化をテーマにした「新タワーを契機にしたこれからのまちづくりについて」を発表した。

路地の多い墨田区では、各家庭の路地園芸が多い反面、樹木や草で覆われた土地の割合を示す「緑被率」が2000年度で9.4%と、東京23区トップの練馬区の22.2%と比較して値が低いことから、区内の緑化推進で墨田区の魅力を底上げする「くるりんグリーンすみだ構想」を披露した。

同構想では、区内の商店街で現在利用されている「すみだスタンプ」をベースに、ICカードを導入する「SUMIMO(スミモ)」が特徴。スタンプに置き換わるポイントカード機能のほか、名称のヒントにもなっている首都圏の鉄道やバスで利用できる「PASMO(パスモ)」と連携して公共交通機関での利用も視野に入れている。

名称をJR東日本が発行する「Suica(スイカ)」ではなく、パスモにひっかけた理由を学生に尋ねると「区内は私鉄や地下鉄、バスが多く走っていたから地域性を考えて」とのことだった。

スミモの導入については、年度ごとにサービス内容や地域を広げる段階的な導入を提案している。また、公共交通機関での利用をモニターする際は、地元の610人を募集するなど、新タワーの「高さ610メートル」にかけた部分もあった。

全5チームが発表を終えた後、墨田区の山崎昇区長が講評を述べた。「24時間365日区内にいると、自分の街ことがわからなくなる。(区外の学生の提案は)目から鱗(うろこ)がおちるものばかりだった」と、学生たちのプレゼンテーションから、ものづくりの街のアピールや電子マネーの活用など、区の活性化のヒントを得たようだった。

写真1:墨田区長賞を受賞した東京富士大学の齋田チーム=22日、東京・錦糸町で(撮影:吉川忠行)
写真2:日本都市計画家協会賞を受賞した明治大学の大串チームはICカード「SUMIMO(スミモ)」を提案(撮影:吉川忠行)

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初出:2007年11月23日11時00分 吉川忠行/オーマイニュース

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