2008-09-25

なぜ“新東京タワー”じゃダメなのか?

最終案に残らなかった理由を探る

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

2011年度に開業する高さ610メートルの新東京タワー。正式名称は4月1日から5月30日まで行われる投票を経て6月上旬に決定し、今夏に着工する。

 しかし、3月19日に発表された最終6案について、ネット上や街中の反応は「結局、新東京タワーと呼ばれるんじゃない?」といまひとつ。ヤフーに配信した記者の記事のコメント欄でも、国鉄民営化後にJRが著名人を集めて「国電」に代わる名称として決定した「E電」と同様、一般に定着しないのではないかとの声が聞かれる。

エムプロでは、東武鉄道が実施する投票とは別に、最終6案と公募案上位10案を合わせた16案で、独自に人気投票を実施している。今回は、最終案に残らなかった案が選に漏れた理由などをまとめた。

“新”東京タワーにできない理由

現在16案でもっとも一般的な名称は、「新東京タワー」であろう。「新タワー」のみではどこに建設されるタワーであるかがわかりにくいため、報道機関ではこの名称を便宜的に使用してきた。しかし、東武側では一度もこの名称を使ったことはなく、「新タワー」を使用している。

では、なぜ事業会社で東武の100%子会社である「新東京タワー株式会社」は、「新タワー」ではないのか。同社に尋ねると、「会社が設立された(2006年5月)当時、もっともわかりやすい名称だったからです」とのことだ。最終案に漏れた理由については、「既存の建物(東京タワー)に“新”を付けるだけというのは、新しい建物の名称としてどうなんでしょう。そもそも建設する会社が違うわけですから、(東京・丸の内の)丸ビルさんと新丸ビルさんのようにはいかないと思います」と担当者は語る。

確かに丸ビルと新丸ビルは、ともに三菱地所の建物だ。一方、東京タワーを運営している日本電波塔は、新タワーには一切関与していない。こうしたことから、「新東京タワー」は選外になったという。

「すみだタワー」はいつ消えた?

 2007年秋に1万8606件の応募があった公募案のうち、上位10案に残ったものの中で「すみだタワー」は東武が新タワーの誘致活動中に仮称として用いていたもの。これが最終案に漏れたのは、放送局側が05年3月に新タワーを建設する「優先候補地」として選んだ地域が、墨田区単独ではなく「墨田・台東エリア」だったからだ。

同地域を選定した条件の一つが、当時誘致を競っていた浅草を擁する台東区など、墨田区に隣接する地域も一体となって新タワーに取り組むことであった。このため、06年11月に新タワーのデザインを発表した時から使用をやめたそうだ。

なお、公募案で1位となった「大江戸タワー」は商標が問題になったとされているが、「商標は2次的な理由」(新タワー社の担当者)という。

ライジングイーストって何?

最終6案も見てみよう。「東京EDOタワー」や「東京スカイツリー」のように、公募案を踏まえたとみられるものもあるが、「ライジングイーストタワー」と「ライジングタワー」は、公募案の上位にはなかったものだ。

この「ライジングイースト」は、東武が06年10月に発表した、新タワー事業のプロジェクト名「ライジングイーストプロジェクト」が由来だ。墨田区を含む東京東部と埼玉県を営業基盤とする東武が、「日出ずる東のプロジェクト」として同地域の発展を願って名付けた。

これら最終6案を選んだのは、作詞家の阿木燿子さんら有識者10人による「新タワー名称検討委員会」(座長・青山やすし元東京都副都知事)。人選について新タワー社に尋ねると、「言葉の専門家、地元代表、タワー関係者などの中から、性別や年齢のバランスを考えて」選考したという。

東武では、住民や商店街向け説明会の都度、周辺地域の発展に寄与するタワーを目指すと説明してきた。はたして、地元が親しめる名前が選ばれるのだろうか。

写真1:新タワーのイメージ図(提供:東武鉄道)
写真2:新タワーの建設最終候補地が墨田・台東エリアに決定した06年3月、握手を交わす山崎墨田区長(中央)と吉住台東区長ら=都内で(撮影:吉川忠行)

■関連リンク
ライジング・イースト・プロジェクト(新東京タワー)



初出:2008年03月28日18時51分 吉川忠行/オーマイニュース

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