商店街が子どもを育てる!
特集・地域活性化は誰のために 第3回
[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]
東京・墨田区内で地域活性化に取り組む、早大の地域経営ゼミ(友成真一・同大理工学術院教授)では、今年度受講している学生以外に、昨年の受講生たちも自主的な活動を続けている。
彼らの舞台は下町情緒あふれる「向島橘銀座(通称:キラキラ橘)商店街」。同商店街の中には、ゼミ開設当初より協力している店舗もあり、学生たちとは顔見知りの仲だ。
「ボス、またやろうぜ!」
同商店街で行われたプロジェクトの一つが、区内の小学生を対象とした「キラキラ探偵団プロジェクト」。ゼミ生扮する“依頼人”が子どもたちに「親せきのおじさん探し」を頼み、ゲームのような形で問題を解決していくことで、舞台となる商店街の人と交流していく仕組みだ。
ゼミ生と顔を合わせた直後の子どもたちは「ゼミ生に付き合ってやる」と言わんばかりの“生意気な”態度だったが、“冒険”が進むにつれて打ち解けていった。プロジェクトを終えるころには「ボス、またやろうぜ!」と、自分たちから働きかけるなど、子どもたちの気持ちに変化が生まれたようだった。
探偵団のボスを務めた商学部3年の松林さやかさんは「最初は言うことを聞いてくれずに困惑した。でも最後は『次は宝探しがいい』と期待以上の答えが返ってきたのがうれしかった」と、ボス冥利(みょうり)に尽きる経験ができたようだ。「一番楽しんでいたのは、私たち大学生だったのかも知れません」。
商店街の意義は人を育てること
楽しんでいたのは探偵団の当人たちばかりではない。商店街の人たちも、我が子のように子どもたちを温かく見守っていた。そこには昔懐かしい「地域のおじさん、おばさん」の笑顔があった気がする。
同プロジェクトに協力した肌着店を経営する大和(おおわ)和道さんは、地域活性化について「建物ではなく、人でやるもの」が持論だ。大和さんは地域の人が楽しんでくれるお店作りをしていきたいという。
地域の商店街は現在、大型スーパーや量販店の進出で、価格や品揃(ぞろ)えだけを見れば劣勢だ。同ゼミの友成教授は、これからの商店街の存在意義は、人を育てることだと指摘する。「俺たちが地域の子どもたちを育てるんだ、と思うようになれば商店街が大きく変わるだろう」と意識の変化に期待する。
同プロジェクトのリーダー、第一文学部3年の佐藤陽子さんは“地域”を「キラキラしたものがたくさん転がっている鉱山」と表現した。可能性を秘めた原石とも言える地域を、ゼミ生たちはどう磨き上げていくのだろうか。(つづく)
写真1:「キラキラ探偵団」では小学生が商店街を冒険=06年11月25日、東京・墨田区で(撮影:吉川忠行)
写真2:商店街の人たちは我が子のように小学生を見守った(撮影:吉川忠行)
■特集・地域活性化は誰のために(地域経営ゼミ後期特集─全4回)
第4回 新タワーは地域のDNAになるか(07年01月28日)
第2回 高校生とまち歩きで地元再発見(07年01月26日)
第1回 新タワーで街は幸せになる?(07年01月24日)
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初出:2007年01月27日11時50分 吉川忠行/ライブドア・ニュース