2007-02-28

商店街が子どもを育てる!

特集・地域活性化は誰のために 第3回

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 東京・墨田区内で地域活性化に取り組む、早大の地域経営ゼミ(友成真一・同大理工学術院教授)では、今年度受講している学生以外に、昨年の受講生たちも自主的な活動を続けている。

彼らの舞台は下町情緒あふれる「向島橘銀座(通称:キラキラ橘)商店街」。同商店街の中には、ゼミ開設当初より協力している店舗もあり、学生たちとは顔見知りの仲だ。

「ボス、またやろうぜ!」

 同商店街で行われたプロジェクトの一つが、区内の小学生を対象とした「キラキラ探偵団プロジェクト」。ゼミ生扮する“依頼人”が子どもたちに「親せきのおじさん探し」を頼み、ゲームのような形で問題を解決していくことで、舞台となる商店街の人と交流していく仕組みだ。

ゼミ生と顔を合わせた直後の子どもたちは「ゼミ生に付き合ってやる」と言わんばかりの“生意気な”態度だったが、“冒険”が進むにつれて打ち解けていった。プロジェクトを終えるころには「ボス、またやろうぜ!」と、自分たちから働きかけるなど、子どもたちの気持ちに変化が生まれたようだった。

探偵団のボスを務めた商学部3年の松林さやかさんは「最初は言うことを聞いてくれずに困惑した。でも最後は『次は宝探しがいい』と期待以上の答えが返ってきたのがうれしかった」と、ボス冥利(みょうり)に尽きる経験ができたようだ。「一番楽しんでいたのは、私たち大学生だったのかも知れません」。

商店街の意義は人を育てること

楽しんでいたのは探偵団の当人たちばかりではない。商店街の人たちも、我が子のように子どもたちを温かく見守っていた。そこには昔懐かしい「地域のおじさん、おばさん」の笑顔があった気がする。

同プロジェクトに協力した肌着店を経営する大和(おおわ)和道さんは、地域活性化について「建物ではなく、人でやるもの」が持論だ。大和さんは地域の人が楽しんでくれるお店作りをしていきたいという。

地域の商店街は現在、大型スーパーや量販店の進出で、価格や品揃(ぞろ)えだけを見れば劣勢だ。同ゼミの友成教授は、これからの商店街の存在意義は、人を育てることだと指摘する。「俺たちが地域の子どもたちを育てるんだ、と思うようになれば商店街が大きく変わるだろう」と意識の変化に期待する。

同プロジェクトのリーダー、第一文学部3年の佐藤陽子さんは“地域”を「キラキラしたものがたくさん転がっている鉱山」と表現した。可能性を秘めた原石とも言える地域を、ゼミ生たちはどう磨き上げていくのだろうか。(つづく

写真1:「キラキラ探偵団」では小学生が商店街を冒険=06年11月25日、東京・墨田区で(撮影:吉川忠行)
写真2:商店街の人たちは我が子のように小学生を見守った(撮影:吉川忠行)

■特集・地域活性化は誰のために(地域経営ゼミ後期特集─全4回)
第4回 新タワーは地域のDNAになるか(07年01月28日)
第2回 高校生とまち歩きで地元再発見(07年01月26日)
第1回 新タワーで街は幸せになる?(07年01月24日)



初出:2007年01月27日11時50分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

高校生とまち歩きで地元再発見

特集・地域活性化は誰のために 第2回

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 1月18日、東京・墨田区の同区中小企業センターで、早大の地域経営ゼミ(友成真一・同大理工学術院教授)がプロジェクトを発表する「大プレゼン大会」が開かれた。会場には地元の中小企業経営者や商店街関係者、高校生などが出席した。

「ドスコイすみだ」、「コンタクツ」、「かすみだ関」、「すみだ大サーカス」──。1班9人程度で構成する4班が活動報告を行う。いずれも、地元商店街や同区内の高校生など、地元の人的な“資源”を巻き込んだプロジェクトだ。

ドスコイすみだは、新東京タワー建設地周辺の居酒屋に、交換日記を置くプロジェクトを披露した。店主と客が新タワーを肴(さかな)に交流を深めていくことで、地元に対する関心を深めてもらおうと試みる。

一方、かすみだ関が発表したプロジェクトは“これからの世代”である高校生がターゲット。区内を巡る「まち歩き」を通して普段通い慣れている学校周辺から何かを感じ取ってもらおうというアイデアだ。高校生たちの地元を丸一日歩くことで、どんな発見があるのだろうかと期待が膨らむ。

自分たちにしかできないプランを

大プレゼン大会の3日後。中小企業センターには、かすみだ関のゼミ生9人に加え、東京都立墨田川高校(以下・墨高)の生徒7人の姿があった。高校生の中には、大プレゼン大会でゼミ生と顔を合わせている生徒もいたためか、会場は自然と和やかな雰囲気に包まれた。

まち歩きの出発前には「誰のためのまち歩きプランか」を各班で話し合い、ルートを決めた。記者が同行した班では、墨高の生徒が学校付近で新たな発見を試みようというプランに決定。「高校生である自分たちにしかできないプラン作り」を合言葉に、ゼミ生と互いのアイデアを出し合った。

高校生からは自分たちが普段遊んでいるボーリング場や、名前は聞いたことがあるけど、自分たちは食べたことのない「伝説のもなか」などが挙がる。墨田区の地図に目的地を足していった結果、放課後何かを食べながら「まったりできる(のんびりと自分を開放できる)」という方向性が見え、まち歩きに出発した。

2年間通っているのに…

曇天の下、まち歩きは「伝説のもなか探し」から始まった。最寄り駅からしばらく歩くと、探していた和菓子店が目の前に現れ、近くに住む高校生からは「えー!毎日自転車で通っているのに知らなかった」と、地元での名物発見の喜びと驚きが入り交じった表情を見せていた。

もなかを手に入れた一行は、高校生行きつけのボーリング場の前を通り、墨高周辺の商店街へ向かう。「部活は何やってるの?」「大学って楽しいですか?」ゼミ生たちとはお互いの学校生活などの話題で盛り上がる。

「コロッケ1個25円?安いっ!」「焼き鳥は1本50円だぁ」。墨高から線路を挟んだ商店街で見つけた総菜店で、高校生からは安さに素直に驚きの声が上がった。この商店街は通学路に当たらないため、ほとんど来たことがないという。

3時間半のまち歩きを終えた高校生は「2年間通っている場所なのに全然知らないところが多かった」と、地元での新発見の連続に満足げだった。

地元の知らない場所は「異国」

まち歩きを終えた各班は、それぞれ墨田区の大きな白地図に、歩いたルートやお店、発見した「名所」などを色とりどりのマジックで書き込んでいき、自分たちだけの「すみだ」が完成していく。

地元で新たな発見をした高校生たちを駅まで送ったゼミ生たちは、全員で反省会を開いた。今回の試みで良かった点として「自分たちの地元なのに感動してくれたこと」などが挙がる。反面、日曜日で閉まっている店が多かったことなどの準備段階に課題を残した。

プロジェクト当日を終え、政治経済学部4年の佐々木知範さんは「高校生にとって“大学生と何かができる”というシンプルなことが、大きなモチベーションになっていた点が新鮮だった」と振り返る。

高校生の感想には「地元だけど知らない場所へ行った時、異国に来た気分になった」など、普段とは違う視点で地元を見られたとの声が多かった。彼らが新たな発見を達成した一方、佐々木さんは「このプロジェクトは、まだまだゴールじゃない!ってことは確か」と語る。ゼミ生はこれからも活性化の“タネ”をまき続ける。(つづく

写真:1個25円のコロッケ。高校生も安さに驚く=21日、東京・墨田区で(撮影:吉川忠行)

■特集・地域活性化は誰のために(地域経営ゼミ後期特集─全4回)
第4回 新タワーは地域のDNAになるか(07年01月28日)
第3回 商店街が子どもを育てる!(07年01月27日)
第1回 新タワーで街は幸せになる?(07年01月24日)



初出:2007年01月26日17時05分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

2007-02-27

新タワーで街は幸せになる?

特集・地域活性化は誰のために 第1回

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 新東京タワー建設地に決まった墨田区。2006年11月にはデザインも決まり、現・東京タワーが開業50周年を迎える08年には着工、地上デジタル放送に切り替わる11年の開業を目指す。同区は東京の東部に位置し、情緒あふれる下町の風景が残っている地域だ。生活必需品中心のものづくりが長らくこの街の基幹産業となってきた。

大学がない同区では、新タワー誘致前の03年から早稲田大学と産業、教育、文化、まちづくりなど包括的な分野で産学官連携に取り組んでいる。その一環で、必ずしも一年間で成果を求めずに、長期的な視野で地域の活性化に取り組む、一風変わったゼミが区内で進行している。友成真一・同大理工学術院教授の「地域経営ゼミ」だ。

新タワー誘致に成功したけれど

六本木、お台場、汐留、表参道──。ここ数年都内で行われた大規模開発の大半は、港区周辺の街で行われた。第二次大戦前、東京の繁華街といえば、浅草や両国といった東京23区の東側に位置する街がほとんどだったが、戦後は新宿、渋谷をはじめとする西側に中心が移ってしまった。近年の再開発でその勢いは加速する一方だ。

新タワーの事業主体である東武鉄道の東京の玄関口は古くからの繁華街・浅草。街の活気が都内で「西高東低」であることを憂慮した東武は、05年に同区とともに新タワー誘致に参戦。わずか1カ月の誘致運動で新タワー建設「優先候補地」の座を勝ち取り、その1年後の06年3月には「建設地」に決定した。

新タワー誘致に成功したことで、同区は従来の製造業中心から観光都市への脱皮を図る。高度成長期に同区の財政を支えた製造業だが、近年は工場が地方や海外へ転出。跡地がマンションに変わった状況では、企業誘致は難しい。一方で、“下町情緒”というキラーコンテンツを持つ同区にとって、新タワーが強力な集客ツールになることは間違いない。

地元では新タワー誘致を歓迎する声が聞かれる一方、街の活性化に疑問を投げかける声もある。新タワー併設の商業施設に進出が予想されるのは、東武系列をはじめとする大手のショッピングセンターやレストラン。結果として潤うのは再開発地域の中だけで、地元商店街や他の観光地への波及効果は乏しいとの見方も根強い。

「今は静かな住宅地だけど、タワーが出来たらどうなるんだろう」──。新タワー建設地近くで居酒屋を営む男性は、期待と不安が入り交じる思いを語った。新タワーの完成で周辺地域は住宅地から観光地に一変する。住環境の変化や商店の客層の変化を不安に思う人がいるのも事実だ。新タワーを起爆剤に「観光都市すみだ」へ転換を図りたい同区や、日光や鬼怒川温泉と並ぶ新たな沿線観光地に育てたい東武と、地元の間には意識にズレがあるように見える。

地域が持つ資源を最大限に生かす

早大の地域経営ゼミでは、地域が元来持っている良さ、人材などの資源をフル活用して「価値の最大化」に取り組む。これは地域を「経営する」という視点で活性化を捉えているからだ。今年度で4年目を迎えた同ゼミは、例年2倍から4倍の競争率となる人気講座の一つ。

さまざまな学部から集まった25人の学生たちは、新タワー建設地周辺の居酒屋や、下町情緒あふれる商店街などを舞台に、地元の人を巻き込んだ活動を行ってきた。学生の多くは、ゼミ終了後も何らかの形で「すみだ」に関わり続けている。

もともと、地域活性化は短期間では大きな成果は見込めず、最低でも5年から10年の歳月を費やして初めて形になるものと言われる。果たして、学生たちはどのような「活性化のタネ」をまいたのだろうか。(全4回・つづく

画像:新東京タワーと周辺地域のイメージイラスト(提供:東武鉄道)

■特集・地域活性化は誰のために(地域経営ゼミ後期特集─全4回)
第4回 新タワーは地域のDNAになるか(07年01月28日)
第3回 商店街が子どもを育てる!(07年01月27日)
第2回 高校生とまち歩きで地元再発見(07年01月26日)



初出:2007年01月24日17時27分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

新東京タワー以外でも活性化を

早大生が墨田区で地域活性化案を披露

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 2011年に高さ610メートルの新東京タワーが完成する墨田区で18日夜、同区内で地域活性化に取り組んでいる早稲田大学の学生が、地元商店主らに活性化プロジェクトを説明する「地域経営ゼミ 大プレゼンテーション大会」を、区内のすみだ中小企業センターで行った。

墨田区では新タワー完成を機に、これまで区を支えてきた生活必需品中心のものづくりに加え、観光を新たな屋台骨に育てようと模索している。また、早稲田大学と02年12月に締結した事業連携協定に基づき、地元の商店街や中小企業を交えた地域活性化の産学官連携に取り組んでおり、その一環として「地域を経営する」をテーマにした友成真一教授(同大理工学術院)のゼミを、新タワー建設地に決まる以前の03年4月から同区内で実施している。

4年目となる今年度は、学生が4グループに分かれ、区内の商店街や新タワー建設地周辺の飲食店を巻き込んだ活性化案を披露。新タワーだけに頼らない地域のあり方を提案した。また、昨年ゼミを受講し、現在も活動を続けている学生も2グループが活動報告を行った。

2グループのうち「キラキラ探偵団プロジェクト」(関連記事)は、区内の小学生に焦点をあてた。ゼミ生扮する“依頼人”が子どもたちに「親せきのおじさん探し」を頼み、ゲームのように問題を解決していくことで、舞台となる商店街の人と交流するプロジェクトを行った結果を報告。商店主の間で地元の子どもを育てる意識が強くなることで、商品を売るだけに終わらない商店街へ変化する可能性を示した。

地元商店街で肌着店を経営する大和(おおわ)和道さんは、4年間ゼミの活動に協力してきた。「学生たちは毎年入れ替わるが、毎年店に来てくれる学生もいる。彼らも我々も活動に慣れてきた。いくら商店街と言っても、いきなりうまく行かないからね」と、4年の歳月で地域にゼミがとけ込んできていることを実感していた。

同ゼミでは、必ずしも説明会までに“結果”を求めていない。友成教授は「短期で“結果”を求めるなら学生をコマとして使うだけになる。学生自身が活性化しなければ地域を活性化できない」と、従来の手法とは違った切り口で、学生が地域活性化に取り組む意義を語った。学生たちの多くは、授業期間が終わった後も自主的に区内で活動を行っていくという。【了】

写真:18日、東京・墨田区内で地域活性化案を発表する早稲田大学地域経営ゼミの学生(撮影:吉川忠行)

■関連記事
新タワーと江戸情緒の両立を
(墨田区長と早大生がガチンコ討論、06年05月12日)

■特集・地域活性化は誰のために(地域経営ゼミ後期特集─全4回)
第4回 新タワーは地域のDNAになるか(07年01月28日)
第3回 商店街が子どもを育てる!(07年01月27日)
第2回 高校生とまち歩きで地元再発見(07年01月26日)
第1回 新タワーで街は幸せになる?(07年01月24日)

■連載・新タワー候補地を"経営"する(地域経営ゼミ前期特集─全4回)
第4回 新東京タワーを建てる意義は?(06年07月28日)
第3回 学生それぞれの「すみだ」(06年07月27日)
第2回 デザインは相手への思いやり(06年07月26日)
第1回 なぜ新東京タワーを誘致した?(06年07月25日)



初出:2007年01月19日15時40分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

2007-02-26

新東京タワーは誰のために建つ

特集・新東京タワー 夢と現実の狭間で 最終回

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 地上波放送がデジタル方式(地デジ)に完全移行する、2011年に完成予定の新東京タワー。新タワーの建設地に決まった墨田区が誘致を行ったのは、高度成長期に同区の財政を支えた製造業の地方や海外への流出に危機感を抱いたからだ。製造業に加え、観光を中心産業として育成していく方針を打ち出した同区は、 05年2月に東武鉄道とともに新タワー誘致に名乗りを挙げる。候補地はさいたま新都心など15にのぼったが、06年3月には建設地の座を勝ち取った。

建設地に決定した理由の一つとして、事業主体と建設用地が明確であったことが挙げられる。同区は04年11月に、山崎昇区長が区議会本会議で誘致の意思表明を行い、同年12月には同区と地元関係者が東武へ協力要請を行った。06年3月の決定後、東武は資本金4億円を全額出資する事業会社「新東京タワー」を東武本社内に設立。同社は現在、放送事業者との協議の窓口となり、新タワー事業の計画策定を行っている。

なぜ東武が名乗りを上げたか

 ここ数年東京で行われた再開発は、六本木や汐留、表参道など西部の街がほとんど。一方、浅草をはじめとする東部の街を見ると、大規模な再開発とは縁遠い状況だ。新宿や渋谷も合わせると、街の勢いは「西高東低」と言える。

東京東部と関東北部が営業基盤の東武では、この状況に危機感を持っていた。東武に限らず、鉄道の通学定期客は少子化により減少しているため、各社は沿線の観光地などを活用して、いかに定期以外の乗客を増やすかに腐心している。

「東京の都市軸が次第に西南方向へ移っていることに大きな懸念を抱いていたが、(東方向に)引き戻すことなど、とても東武一社の手に負えない」。11月に開かれた地元関係者向けシンポジウムの席上、新東京タワーの宮杉欣也社長は、新タワー建設を契機に、地元と一丸となって「西高東低」を是正したい意向を示した。

同社は新タワーの年間来場者数を、初年度540万人、開業後30年平均を270万人と見込む。仮に540万人のうち200万人の大人が、定期外で浅草駅と最寄りの業平橋駅の間を往復で乗車した場合、運賃の合計額は5億6000万円。500億円と見込まれるタワーの建設費は、展望台の収入や放送事業者からの施設利用料で回収できるとしており、東武にとって定期外客の増加は、増収につながる可能性が高い。また、オフィスビルを併設する計画なので、定期券利用者の増加も見込める。

起爆剤で"爆発"するか

 墨田区は9月、新タワー建設地と周辺地域の計35万平方メートルの将来都市像を描いた「まちづくりグランドデザイン」をまとめた。新タワーを起爆剤に同区を観光都市に変ぼうさせるための将来図だ。

現在、建設地周辺は防災面で不安な地域が多い。道路の道幅が狭く、老朽化した木造家屋が密集する地域もある。同区では下町情緒を残しながら、道路整備や建物の不燃化促進などを行う方針だ。また、建設地沿いを流れる北十間川の整備など、地域の特性を生かしたまちづくりを行っていく。

このほか、同区ゆかりの浮世絵画家・葛飾北斎の作品や資料を展示する「北斎館」を区内に建設する計画があり、グランドデザインの対象地域以外でも観光面でてこ入れが行われる。

誰のために建てるのか

山崎昇・墨田区長は、同区のみならず東京東部全体の活性化を掲げて新タワー誘致を行った。7月からは隣接する区の観光担当が定期的に集まり、連携を模索している。

また、山崎区長は5月に行われた早稲田大学の学生との討論会で、良い街の条件として実際に居住している人数を示す「夜間人口」が多いことを挙げた。新タワーで「住みたい街」としての地位も向上させたいようだ。

企業や行政はそれぞれの思惑で新タワーの誘致を行った。いまのところ、両者が地元へ行う説明を聞く限り、単なる観光地づくりで終わらず、恒久的なまちづくりを目指すようだ。しかし、これを実現するには、多くの住民が企業や行政に対し、賛成・反対を含む明確な意思表示を行っていくことが重要だろう。街の主役は企業でも行政でもない。その街に住む人なのだから。【了】

写真上:11月24日に東武鉄道が発表した新東京タワーのイメージイラスト(提供:東武鉄道)
写真中:墨田区が建設地に決定した理由の一つは、東武が事業主体と建設用地の引き受けを表明したこと。写真は業平橋駅から見た東武所有の新タワー建設地=06年3月15日(撮影:吉川忠行)
写真下:業平橋駅周辺は団地の建つごく普通の住宅地だ=06年6月28日(撮影:吉川忠行)

■特集・新東京タワー 夢と現実の狭間で
第2回 新タワーより高い上海ヒルズ展望台
第1回 台北101と新タワーを比較する



初出:2006年12月02日11時30分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

新タワーより高い上海ヒルズ展望台

特集・新東京タワー 夢と現実の狭間で 第2回

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 2008年8月の北京オリンピック開催を控えた同年春、高層ビルの建設ラッシュに沸く中国・上海市で、森ビルが手がける超高層複合ビルプロジェクト「上海ヒルズ」が竣工する予定だ。新タワーより高い展望台を擁する上海ヒルズの工事は現在、高さ70階(約300メートル)部分まで達している。

同社は、1986年のアークヒルズに始まり、愛宕ヒルズ(01年)、六本木ヒルズ(03年)、表参道ヒルズ(06年)と、大規模開発プロジェクトに必ず「ヒルズ」を冠してきたが、初めて海外でこの名称を使う。上海ヒルズがオープンする08年に着工し、11年完成予定の新東京タワーと同複合ビルの展望施設を比較した。

展望施設は新東京タワーより高い

 上海ヒルズの中心となるメインタワー「上海ヒルズ環球金融中心」は、地上101階、地下3階建てで、高さは492メートル。ビルの頂部には台形の開口部が目を引く。472メートルの100階には長さ55メートルの展望廊下を設け、94階には広さ700平方メートル、天井高8メートルの大展望スペースも用意し、年間250万-300万人の来場者を見込む。森ビルでは広さを生かした大型展示も検討しているという。

2008年に上海ヒルズがオープンすると、新東京タワーの完成前に、第2展望台(高さ450メートル)を22メートル上回る「世界一高い展望台」が出現する。新タワーは建物全体の高さでは世界一となるが、観光客が実際に見られる眺望は、わずかな差とはいえ「世界一の高さ」ではない。

新タワーの事業主体である東武鉄道では、展望台よりも建物としての「高さ世界一」を国内外にアピールしていくという。新タワーの基本設計が07年春までに行われることを考えると、同社が第2展望台の高さを変更する可能性は少ない。

高さを競うだけのタワーではない

 「高さはもちろん、美しさや親しみでも世界一になりたい」──。24日のデザイン発表の際に配布された東武の資料には、単に高さだけを競うタワーではないと、開発の方向性が示されている。

タワーの形状は日本刀や伝統的な日本建築に見られる「そり」と「むくり」を意識した。断面図で見ると、足部から頂部に向かって、三角形が円形に連続変化していく構造だ。また、災害時も電波塔としての役目を担うため、奈良・法隆寺の五重塔に見られる制震構造を最新技術で再現するなど、耐震性と耐風性も考慮している。

東武では高さ350メートルの第1展望台に、レストランや店舗などを設ける予定。また、新タワーの目玉となる高さ450メートルの第2展望台外周には、ガラスで覆われた、らせん状の空中回廊を設ける計画だ。

新タワーの年間来場者数は、国内では圧倒的な高さとなる展望台を武器に、初年度540万人、開業後30年平均で270万人を見込む。

単なる観光地を作るつもりはない

東武が全額出資する事業会社「新東京タワー」(東京都墨田区)の宮杉欣也社長は、11月に開かれた地元関係者向けのシンポジウムで「単なる観光地を作るつもりはない」と述べ、周辺地域の発展に寄与するタワーを目指す方針を示した。

同社では新タワーを防災拠点としても位置づけており、周辺にも「下町らしい個性あふれる賑わいを演出した複合施設」を計画している。開業当初のにぎわいが一段落しても、魅力の衰えない施設をどう実現していくかが課題だ。

タワーの高さは世界一、展望台の高さは…。このもどかしさをどう発展的に解決する新タワーが完成するのだろうか。(つづく

画像上:11月に森ビルが発表した「上海ヒルズ」のイメージイラスト(提供:森ビル)
画像中:上海ヒルズの中心となるメインタワー「上海ヒルズ環球金融中心」の頂部に設けられた台形の開口部(提供:森ビル)
画像下:11月24日に東武鉄道が発表した新東京タワーのイメージイラスト(提供:東武鉄道)

■特集・新東京タワー 夢と現実の狭間で
最終回 新東京タワーは誰のために建つ
第1回 台北101と新タワーを比較する



初出:2006年12月01日16時00分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

2007-02-25

台北101と新タワーを比較する

特集・新東京タワー 夢と現実の狭間で 第1回

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 2011年に開業予定の新東京タワーのデザインが24日発表された。当初の計画と同様、タワーの高さは地上610メートルで、350メートルと450メートルの部分に第1、第2展望台を設置する。第2展望台の外周には、ガラスで覆われた空中回廊を設ける予定で、今後環境アセスメントなどで修正が加えられない限り、新タワーは今回発表されたデザインでお目見えする。

現在、建築物として高さ世界一を誇るのは、553メートルの「CNタワー」(カナダ)だ。アジアでは、508メートルの「台北101」(台湾)が最も高い。建築物のうち超高層ビルに限ると世界一高いビルだ。同じアジアに位置する台北101に、新タワー完成後のまちづくりの手がかりはないか。10月中旬、遅い夏休みを取り台湾へ向かった。

台北の六本木ヒルズ

台北101は2004年に再開発地区「信義計画区」にオープンした。最寄り駅は台北駅から地下鉄で10分ほどの市政府駅。ここから歩いて7分ほどだ。周辺には市政府庁舎や市議会議事堂があり、台北101に隣接する高級ホテル「グランドハイアット 台北」との間には片側4車線の広大な道路が貫く。

展望台は地上382メートルの89階と、同390メートルとなる91階の2カ所。入場料は89階の屋内展望台が350元(1元=4円換算で1400円)、 91階の屋外がプラス100元(同400円)だ。地下1階から地上5階までの低層部は高級ブランド店や食料品店などが入ったショッピングモールとレストラン街、中層部は金融やIT関連企業などが入るオフィスフロアとなっている。

台湾で同地区一帯は「台北のマンハッタン」と呼ばれているようだが、オフィスに入居する業種や高級ホテル、隣接する高級住宅地やコンベンションセンターを見ると、六本木ヒルズや横浜・みなとみらい21地区を思い起こしてしまう。

金色の球は何?

 屋内展望台へは5階のエレベーター乗り場から、世界最速の分速1010メートルを誇る日本製エレベーターでわずか37秒で到着する。日本の高層ビルにある展望台と比べて広々としており、ゆったり景色を楽しめるような雰囲気だ。カフェや土産物店のほか、展望台から国内外へ手紙を送れるコーナーもある。

また、展望台の中心部に入ると金色の球が目に付く。風による振動を抑えるダンパー(チューンド・マス・ダンパー、TMD)だ。直径5.5メートル、重さ660トンと世界最大の大きさで、TMDの周りでは写真を撮る観光客も多かった。

台北の街全体が見渡せる展望台からの眺めはすばらしい。眼下には高級マンション「信義之星」が広がり、西側の窓からは台北駅前のデパート「新光三越」が入る新光タワー(高さ244メートル)が見える。屋外展望台へ出るとかなりの強風が吹いており、ピューピューと風切り音が途切れることがない。

新旧入り交じる街並み

 展望台から見えた富裕層向け住宅地へ向かった。台北101と信義之星の間を通る幹線道路の下では、2011年末開業予定の地下鉄信義線の工事が続いており、最寄り駅の「世貿中心駅」開業後は台北駅方面へのアクセスが向上する。現在住宅地から地下鉄の市政府駅までは20分ほど歩くが、住宅地に近い信義線の開業で、周辺地域の開発が一層加速しそうだ。

信義之星を通り過ぎると突如風景が変わる。低層の古びた建物がひしめく、台北市内でよく見かける下町の風景だ。商店街には「10元ショップ」もあった。台北101からは10分ほどの距離であったが、観光客と思われる人は皆無だった。

新東京タワー建設地の周辺は?

一方、新東京タワーの建設地である「押上・業平橋地区」も、現在はごく普通の住宅地。墨田区が中心となって進める新タワー周辺の「災害に強いまちづくり」では、建物の不燃化促進や生活道路の整備による災害対策に加え、下町情緒を生かした観光客をもてなす街並みづくりを目指す。

また、同区では建設地沿いを流れる北十間川を「水辺拠点」と位置づけ、水質浄化や橋の改修、親水ステージや船着き場の整備などを計画している。新タワーでいかに観光客を呼び込み、周辺の街を活性化できるかが「観光都市」を目指す同区の課題だ。

はたして、どのような風景に変ぼうするのだろうか。(つづく)

写真1:高さ508メートルの「台北101」は、超高層ビルでは世界一の高さ=06年10月18日、台北市で(撮影:吉川忠行)
写真2:展望台中心部にある金色の球は風による振動を抑える「チューンド・マス・ダンパー」=06年10月18日、台北市で(撮影:吉川忠行)
写真3:台北101から10分ほど歩くと下町の風景が広がる=06年10月18日、台北市で(撮影:吉川忠行)

■特集・新東京タワー 夢と現実の狭間で
最終回 新東京タワーは誰のために建つ
第2回 新タワーより高い上海ヒルズ展望台



初出:2006年11月30日12時50分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

新東京タワー 高さ以外も重要

墨田区でシンポジウム開かれる

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 東京都墨田区内の自治会や商店街を中心とする新東京タワー建設の推進団体「新タワー建設推進協議会」は29日、シンポジウム「タワーのある街・すみだ~下町文化の創成~」を同区内のすみだリバーサイドホールで開いた。地元住民や商店主など320人が出席した。

シンポジウムは「新タワーとまちづくり」をテーマに、小出治・東京大学工学部教授の基調講演で始まった。防災分野が専門の小出教授は、東京湾北部で地震が発生した際、同区で建物倒壊が起こる可能性が東京西部に比べて高いと指摘。現代の災害対策は、従来行われてきた建物の不燃化による「燃えない街」から倒壊を防ぐ「壊れない街」へ移行しており、延焼と倒壊両方の対策を考えたまちづくりを進める必要性を強調した。

 基調講演に続き、新タワーの事業主体「新東京タワー」(東京都墨田区)の宮杉欣也社長が、24日に発表したデザインなどの現状報告を行った。宮杉社長は新タワー事業について「単なる観光地を作るつもりはない。訪れたい街、住みたい街を実現することを目指している」と述べ、地元へ理解を求めた。同社は今後、放送事業者などへ出資を求めて経営基盤を強化。放送施設の使用料と展望台の観光収入で、500億円と見込まれる建設費を返済する。

シンポジウム後半ではパネルディスカッションが行われ、都市計画の専門家らが「新タワーに望む、新しい下町文化の創成」をテーマに持論を披露した。

小出教授は新タワーについて「高さで競うものではない。(将来)高さが世界一ではなくなるかもしれないが、(下町文化の活用で)ここに住んで良かったと誇りに思えるライフスタイルの提案ができればすばらしい」と高さ以外の要素の重要性を語った。建築家の彦坂裕氏は、観光と住民の生活の両立について「京都はすぐに外部の人が入れない"いちげんさんお断り"などの仕掛けで、観光も生活も成り立っているのではないか」と、まちづくりのヒントを示した。

新タワーは高さ610メートルで、350メートル部分に第1、450メートル部分に第2展望台を設ける。2008年に着工し、地上デジタル放送へ完全移行する11年に開業する予定。【了】

写真1:シンポジウム「タワーのある街・すみだ」で展示された新タワーの模型=29日、東京・墨田区で(撮影:吉川忠行)
写真2:「単なる観光地を作るつもりはない」と地元へ理解を求める新東京タワーの宮杉社長(撮影:吉川忠行)



初出:2006年11月30日11時57分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

2007-02-24

新東京タワー デザイン決定

"日本の伝統美と近未来的デザインの融合"

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 「新東京タワー」の事業主体である東武鉄道<9001>と同社が全額出資する新東京タワー(東京都墨田区、宮杉欣也社長)は24日、新タワーのデザイン案を発表した。

新タワーは首都圏の地上デジタル放送用電波塔。高さは従来の計画通り地上610メートルで、日本刀や伝統的な日本建築にみられる緩やかな曲線「そり」と「むくり」を意識し、タワーの頂上から足元に向かって連続的に変化するデザインとした。展望台も計画通り地上350メートルと同450メートルの2カ所に設ける。また、足元部分を三角形で構成することで、周辺への圧迫感に配慮しつつタワーの安定が得られるようにした。

デザインコンセプトは◆時空を超えた都市景観の創造◆まちの活性化への起爆剤◆都市防災「安全と安心」への貢献──の3点。日本の伝統美と近未来的デザインの融合や、新タワー周辺地域の活性化、耐震性や耐風性に優れた構造などを目指した。

同デザイン案は建築家の安藤忠雄氏と彫刻家の澄川喜一氏(元東京芸大学長)が監修した。東武と新東京タワーでは、両社が7月に行ったアンケート結果も両氏と設計を担当した日建設計(東京都千代田区、中村光男社長)に伝えたという。

アンケート結果(応募総数5079人)によると、「新タワーに求めるもの」は「景観との調和」が3281人でトップ。「デザインのモチーフ」は「未来的」や「日本的」といった項目に票が集まった。「新タワー周辺に欲しい施設」では「ショッピングモール」、「美術館・博物館・水族館」を望む声が多かった。

東武と新東京タワーは今後、2006年度中に基本設計を終え、07年度に実施設計、08年度に着工し、地上波放送がデジタル放送へ完全移行する11年度中の開業を目指す。【了】

画像:新タワーのイメージイラスト(提供:東武鉄道)



初出:2006年11月24日18時57分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

新タワーで東京東部の発展を

東武鉄道が地元住民らにコンセプトを披露

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 新東京タワー建設を推進する「新タワー建設推進協議会」(同協議会主催)が10日、東京都墨田区のすみだリバーサイドホールで開かれた。地元住民や商店主など200人が出席した。

3回目となる今回は、墨田区が「押上・業平橋地区」を中心とする約35万平方メートルの地域を対象とした「まちづくりグランドデザイン」の報告を行い、新タワーの事業主体となる東武鉄道<9001>が、新タワー事業のコンセプトや進捗状況を説明した。

 墨田区の担当者は、9月に発表したグランドデザインの概要を説明。新タワーが建設される「すみだ中央エリア」を同区内の両国、錦糸町両駅の周辺地域と同じく「広域総合拠点」として整備すると述べた。また、新タワーが完成する11年度までに駐輪場や防災広場の整備を行い、25年度までの中長期計画として、水上交通ネットワークや幹線道路の整備、建物の不燃化、商店街活性化へ向けた街並み整備などを行う方針を示した。

事業主体となる東武鉄道と同社が設立した事業会社「新東京タワー株式会社」の担当者は、新タワー事業のプロジェクト名やコンセプトを披露した。プロジェクト名は「Rising East Project(ライジング・イースト・プロジェクト)」。墨田区を含む東京東部と埼玉県を営業基盤とする東武では、「日出ずる東のプロジェクト」として同地域の発展を願って名付けたという。

コンセプトとしては◆日本、下町のものづくりのDNAを継承し、人々の交流が新たな都市文化を創造する「アトリエ・コミュニティ」◆人に、地球に優しく、災害に強く、安全で安心して暮らせる、潤いと活気に満ちた「優しいコミュニティ」◆先端技術、メディアが集積し、新しい日本、新しい東京を、世界へと発信するタワーを核とした「開かれたコミュニティ」──の3つを掲げた。東武では今後、デザイン案を年内に公表し、来年春までに基本設計を終え、08年にはタワー建設に着手する予定。

出席した地元住民や企業経営者からは「新タワーへの交通手段をもっと考えないと失敗するのでは」「下町の定義を明確にすべきではないか」「近隣の商店街で土地の買い占めが始まっているという噂がある」といった意見や質問があった。墨田区や東武では、今回寄せられた意見を参考に、検討を重ねていくとしている。

新東京タワーは高さ610 メートルの首都圏向け地上デジタル放送用電波塔で、2011年の完成を目指す。今年3月に新タワーの建設候補地が墨田区内の「押上・業平橋地区」に決定。6月には、墨田区内の自治体や町会、商店会や地元企業が中心となり、従来誘致活動を推進してきた誘致団体が発展する形で同協議会が発足した。【了】

写真1:墨田区の「まちづくりグランドデザイン」に掲載された新タワーを中心とする「新タワーゾーン」のイメージイラスト(提供:墨田区)
写真2:10日、東京都墨田区のすみだリバーサイドホールで開かれた新タワー建設推進協議会(撮影:吉川忠行)



初出:2006年10月10日18時44分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

2007-02-23

新タワー周辺都市像が決定

墨田区、「まちづくりグランドデザイン」の最終報告まとめる

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 高さ610メートルの「新東京タワー」建設の最終候補地となった墨田区は21日、建設候補地の「押上・業平橋地区」と周辺地区の将来都市像を描く「まちづくりグランドデザイン」の最終報告をまとめた。同日より同区ホームページで公開している。

同区では7月に中間報告をまとめた後、8月にパブリックコメントを実施し、115件の意見が寄せられた。また、7月と9月には「押上・業平橋地区まちづくりグランドデザイン策定にかかわる有識者懇談会」(委員長・小出治東京大学工学部教授)が各1回ずつ開かれ、防災広場の日常利用や雨水利用に関する意見が委員から出された。

同グランドデザインの対象地域は、新タワーが建設される「押上・業平橋地区」と、周辺の浅草通りや言問通りなど6つの通りの沿道までを含む約35万平方メートル。パブリックコメントでは、交通機関の整備や下町の良さを生かして欲しいといった要望のほか、企業のための計画ではないかといった批判など、さまざまな意見が寄せられた。また、「(グランドデザインは)総花的で何をやりたいかわからない」との声も少数ながらあった。

同区では今後、最終報告について地元で説明会を開くほか、同区の都市計画マスタープランの一部を変更する予定。【了】

写真:新タワーのイメージイラスト(上段)と現在の建設予定地周辺(イラスト提供:東武鉄道、撮影:吉川忠行)



初出:2006年09月21日19時17分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

新タワー周辺都市像 意見求む

墨田区 グランドデザイン中間報告へのパブコメ募集開始

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 墨田区は1日、新東京タワー建設の最終候補地となった「押上・業平橋地区」と周辺地区の将来像を描く「まちづくりグランドデザイン」の中間報告を公表し、これに対する同区内外からのパブリックコメントの募集を開始した。

グランドデザインでは、新タワー建設予定地や周辺地域を「すみだ中央エリア」と名付け、「下町文化創成拠点」をコンセプトとして「災害に強い安全安心なまち」など4つのテーマを設定した。

同区では、寄せられた意見を参考に、9月中に最終案を策定する予定。募集期間は1日から21日の午後5時まで。提出方法は電子メールまたはファックス、郵送で、住所・氏名または団体名・電話番号を記入の上、同区役所の「墨田区新タワー・観光推進担当新タワー・観光推進課」まで。

宛先:墨田区新タワー・観光推進担当新タワー・観光推進課
住所:130-8640 墨田区吾妻橋1-23-20
TEL:03-5608-6500
FAX:03-5608-6934
E-mail:SHINTOWER@city.sumida.lg.jp

【了】

写真:新タワーのイメージイラスト(上段)と現在の建設予定地周辺(イラスト提供:東武鉄道、撮影:吉川忠行)



初出:2006年08月01日18時52分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

2007-02-22

隅田川花火 新タワー決定祝う

約2万発が夏の夜空を彩る

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 夏の風物詩となった隅田川花火大会(同実行委員会主催)が29日夜、「新東京タワー」の建設候補地となった墨田区と浅草に代表される台東区の間を流れる隅田川で行われた。

隅田川の花火は、1733年5月に行われた水神祭で花火が打ち上げられたことを起源とする。1978年に復活した大会は今年で29回目。第1と第2の2会場から約2万発の花火が打ち上げられ、色とりどりの大輪の花が夏の夜空を彩った。

今回は両会場ともに「祝 新東京タワー決定!」をテーマにした趣向で幕開け。2011年に完成予定の新東京タワーの誘致が、墨田区の「押上・業平橋地区」に決定したことを祝し、笑顔をかたどった花火も打ち上げられた。

 「後ろにも人がいますので、立ち止まらず進んでください」「携帯電話での撮影はやめてください」─。隅田川に架かる橋は交通規制が実施され、警察官が立ち止まろうとする観客に移動を促した。また、隅田川には屋形船が20艘(そう)ほど出ていた。大輪の花が夜空を焦がすと、船上からビール片手に花火見物する人たちと、橋の上から見物する人から大きな歓声があがった。【了】

写真1:29日、約2万発の花火が初の夜空を彩った隅田川花火大会(撮影:吉川忠行)
写真2:夜空に大輪の花が咲くと屋形船や橋上の見物客から大きな歓声があがった(撮影:吉川忠行)



初出:2006年07月29日21時45分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

連載・新タワー候補地を"経営"する(4)

新東京タワーを建てる意義は?

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 ものづくりを中心とする街から「ものづくり+観光」の街へ向け、かじを切った墨田区。2011年完成予定の新タワーは「観光都市すみだ」の中心的な役割を担い、強力な集客力を発揮することが期待されている。都内で来訪者が多い街は、新宿や渋谷、表参道など西部地域に集中しており“西高東低”の様相を呈している。墨田区が新タワーを誘致した背景には、新タワーの完成で、同区だけではなく浅草を擁する台東区など、周辺地域との連携で東京東部を活性化したいという思いがある。

一方、新タワー完成で、本当に周辺地域が活性化するかについては、疑問の声もある。建設予定地は押上・業平橋両駅に隣接しており、新タワーを中心とした再開発地域の外にある周辺の商店街に立ち寄る必然性が生じない。地域経営ゼミ(友成真一・早大理工学術院教授)の学生たちは「すみだ」そのものの魅力を引き出すことで、タワーに依存しない地域活性化の道を探っている。

地域の“モノ”や“ヒト”をどう使う?

「地域経営をやりたいと大学側に持ちかけたんです」。友成教授は、同大と墨田区が産学官連携に至ったいきさつをこう振り返る。大学と地域の連携というと、大学を誘致するやり方が思い浮かぶが、地域経営ゼミのように、地域の人たちと学生が関係を築いていくほうが有意義な連携だと話す。

同ゼミでは、来店するだけで客が得をするポイントシステムを商店街で導入するなど、その地域にすでにある“モノ”や“ヒト”をどう利用し、発展させるかを主眼に置き、学生が地域活性化策を検討している。この考え方は、同教授が経営について「持てる資源を最大限に活用し、目的達成を極大化する行為」と定義しているところから来ているようだ。

ゼミが始まって間もない5月、財団法人本庄国際リサーチパーク研究推進機構の佐々木滋生さんは「地域住民がどうしたいかを考慮しないで専門家が絵を作ってしまった」と、従来のまちづくりの問題点を指摘した。地域住民がどういう街にしたいかを、住民自身が提案できるようにしていくのが、今後のあり方ではないかと述べた。こうした失敗を防ぐために佐々木さんは「個人と個人の交流がいかに広まるか」が重要だと語り、友成教授も現場で人と人とが接する「超ミクロの世界」の大切さを強調する。

地域活性化の取り組みは、最低でも5年、10年の単位で考えていく性質のもので、1年間で結果を出すことは不可能に近い。政治経済学部4年の佐々木知範さんは「何かを変えるのは継続性が必要だと思う。せめて波を起こして終わらせたい」と語った。

新タワーを建てて何をしたいのか

墨田区は新タワーを中心とした観光都市の育成を進めている。しかし、同区や事業主体となる東武鉄道と地元の3者で、今後計画が進むにつれて思惑が異なってくる可能性がある。

「新タワーを建てて何をしたいのか」という目標設定が、観光で活性化したいという視点にとどまらず、これをどう掘り下げていけるかによって、新タワーが一時的な観光名所で終わるか、真の意味での地域活性化の起爆剤になるかが分かれてくる。

東京東部の活性化を成功させるためには、形式的な地域と企業・自治体の話し合いではなく、ひざ詰めの議論をしていく必要がある。新タワーのデザイン監修についても、建築家の安藤忠雄氏と彫刻家の澄川喜一氏だけではなく、墨田区にゆかりのあるデザイナーを交えれば、また違った見方が加わり、新タワーと地域の新たな関係性が生まれてくるのではないだろうか。

◇ ◇ ◇

新タワーによる地域活性化が、既存の“箱モノ”による活性化とは違った結果を出すためには、地元地域が持つ資源を最大限に活用し、新タワーを誘致した意義を常に問い続ける必要があるだろう。【了】

写真:「地域経営では地域の資源を最大限に生かすことが大切」と語る友成真一教授=5月25日、早稲田大学で(撮影:吉川忠行)

■連載・新タワー候補地を"経営"する(地域経営ゼミ前期特集─全4回)
第3回 学生それぞれの「すみだ」(06年07月27日)
第2回 デザインは相手への思いやり(06年07月26日)
第1回 なぜ新東京タワーを誘致した?(06年07月25日)

■特集・地域活性化は誰のために(地域経営ゼミ後期特集─全4回)
第4回 新タワーは地域のDNAになるか(07年01月28日)
第3回 商店街が子どもを育てる!(07年01月27日)
第2回 高校生とまち歩きで地元再発見(07年01月26日)
第1回 新タワーで街は幸せになる?(07年01月24日)



初出:2006年07月28日16時45分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

2007-02-21

新タワー案に5000人の声

東武が実施のアンケート

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 「新東京タワー」の事業主体である東武鉄道<9001>は27日、新タワーと周辺のまちづくりに関するアンケート「届け!私が想う新タワー」の回答内容のうち、男女比などの属性を公表した。

アンケートは7月4日から24日まで、インターネット上で行われ、5079人から回答を得た。このうち男女比率は、男性3543人、女性1536人。年齢比率は40歳代の1568人がもっとも多く、30歳代の1481人、50歳以上の1231人と続き、20歳代は693人だった。

職業比率は、会社員の2900人が圧倒的に多く、以下専業主婦677人、自営業406人で、その他とした人も607人いた。また、地域比率は、東京が1505人、埼玉が1486人で、東京と埼玉以外の関東地域が1302人だった。

同社では12月に予定しているデザインの事業者案発表時に、回答内容の詳しい集計結果を発表するとしている。【了】

画像:新タワーのイメージイラスト(提供:東武鉄道)



初出:2006年07月28日15時47分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

連載・新タワー候補地を"経営"する(3)

学生それぞれの「すみだ」

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 地域経営ゼミ(友成真一・早大理工学術院教授)の活動の中で、中心的な役割を担うのが、8人のコーディネーターだ。彼らはかつて受講した学生で、同ゼミのアドバンスト(上級)コースとして通年履修している。

2年目の「すみだ」を見たコーディネーターと、初めて「すみだ」に触れた今年のゼミ生。それぞれがどのような感想を抱いて前期を終えたのか。

コーディネーターって難しい

 「ゼミ生のころは楽だった。すみだの活性化という課題が明確だったから。今は何に取り組むかを自分で設定し、検証と考察を繰り返す日々」と前期を振り返るのは、政治経済学部3年の古屋智子(さとこ)さん。「アドバンストコースという友成教授の真意がかすかに見えた気がした」と、コーディネーターとして参加する意義を見い出したようだ。

講師には毎年同ゼミを講義を行っている人もいる。前回取り上げたデザイナーの高橋正実さんもその一人で、コーディネーターの立場で講義を受けると、印象が違うようだ。政治経済学部4年の吉田健太郎さんは「昨年聞いたときは、話がさっぱり分からなかったが、今年改めて聞いたときに、自分が1年間学んできたこと、そしてこれから社会で実現していきたいことと、スッとつながっていった」と感想をもらしながらこう続けた。「見えなかったものがよく見えるようになる。そんな感覚を味わった」。

また、同じ場所を訪れても、新しい発見があるという意見もあった。第一文学部3年の佐藤陽子さんは「ゼミ生であった時とは違う視点で、すみだを見ることができていることに気付いた」と感想を寄せた。新たな視点で「すみだ」を見られた理由を、「昨年1年間の経験を通して『私がすみだに成長させてもらった』から」と語る。

彼らは昨年と違う「すみだ」を発見できた一方、自分なりのコーディネーター像探しに悩んでいたようだ。政治経済学部5年の山内英嗣(ひでつぐ)さんは「コーディネーターという立場に難しさを感じた。本を読んでみたところで、極意が身に付くわけでもなく...」と苦悩する。

不安と期待の入り交じるゼミ生

一方、ゼミ生は1年目ということで、どう活動すれば良いかに悩みながら前期を過ごした人もいた。「どれも受け身で聞いていることが多かった」と、教育学部3年の山森明日葉さんは、なかなか自主的に動けなかったことが残念なようだ。

また、周囲の「すみだ」に関する知識の多さに圧倒され、やや不安を感じたとの感想を寄せたのは国際教養学部1年の大野真以子さん。「すみだのことを、まだよく知らないので大丈夫かなと思う」。

ゼミ生の多くは、こうした不安を抱きつつも、さまざまな人に出会えたことは良かったという。

後期はどうしたい?

記者が学生に尋ねたアンケートで「後期はどのようなことに取り組みたいか」との問いに対し、「人」をテーマに活動したいという回答が多く寄せられた。

「現状だと、やはりお客さん感は否めない」と感じた商学部3年の平野峻さんは、「もっとミクロな視点に立ちたい。お年寄りや、主婦、子供たちなど墨田区民に近づきたい」そうだ。実際に同区で生活している人とふれあうことで、良い点や悪い点を把握したいという。

地域経営の“結果”を見届けたいというは、コーディネーターの吉田さん。「大学生活ラストの年なので、基本的に来年はない。だからこそ地域が動く感じを味わいたい」と後期への期待感を寄せた。「小さなことでも良いから、何か結果を見てみたい」。

ゼミ生をはじめ、地域経営ゼミの学生たちは、8月1日から3日間の合宿で、「すみだ」の人たちへのインタビューや、後期の具体的な行動計画を検討する。現在学生たちは合宿へ向け、企画案の最終的な取りまとめに奔走している。(つづく

写真1:班ごとに分かれた学生たちは、コーディネーターを中心に議論を進めていく=5月25日、早稲田大学で(撮影:吉川忠行)
写真2:大学内の講義だけではなく、墨田区内を歩くことで学生たちは地域経営を考える=6月22日、キラキラ橘商店街で(撮影:吉川忠行)

■連載・新タワー候補地を"経営"する(地域経営ゼミ前期特集─全4回)
第4回 新東京タワーを建てる意義は?(06年07月28日)
第2回 デザインは相手への思いやり(06年07月26日)
第1回 なぜ新東京タワーを誘致した?(06年07月25日)



初出:2006年07月27日21時10分 ライブドア・ニュース

2007-02-20

連載・新タワー候補地を"経営"する(2)

デザインは相手への思いやり

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 早稲田大学の地域経営ゼミ(友成真一・同大理工学術院教授)は2003年から始まり、4年目の今年は25人の学生が受講。例年2倍から4倍の競争率となる人気ゼミだ。

ゼミ生のほかに以前受講し、現在はゼミ生を引っ張っていく役割を担うコーディネーター8人と、学部生を補助するTA(ティーチング・アシスタント)の大学院生2人の計10人がゼミの牽(けん)引役となる。合計35人の学生は「すみだ大サーカス」、「コンタクツ」、「ドスコイ墨田」、「かすみだ関」の4班に分かれ、区職員との打ち合わせや商店街での調査など、学生が自発的に活動している。

質問はコミュニケーションだ

 同ゼミは、さまざまな学部から学生が集まる学部横断型を採っている。理工系の学生だけでは質問が出にくいものが、他の学部生を交えることで意見交換が活発になる、と友成教授はメリットを指摘する。「質問はコミュニケーション。わからないことを聞くことだけが質問ではない。質問することを楽しいと思って欲しい」。相手に何かを尋ねることの大切さを理解してもらうのが狙いのようだ。

講師の話が終わると必ず「質問タイム」が設けられ、毎回10人近い学生が手を挙げる。もっとも良かった質問を講師が「ベスト・クエスチョン」に選び、講師の個性が感じられる賞品がプレゼントされる。

意見のやりとりは授業の場だけではない。メーリングリストや、チャットで話し合った履歴を議事録として使うなど、顔を合わせられない試験期間中も、さまざまな形で意見が飛び交っている。

すみだを肌で感じる

前期のゼミでは、中小企業の経営者やまちづくりの専門家、区職員を講師に迎え、地域活性化に直結する内容から、地域経営に求められる問題解決に必要な思考力を鍛えるものまで、多様な講義が行われた。

また、医療機器や携帯電話、F1マシンのエンジン部分など精密メッキを手がける「深中メッキ工業」や、京成曳舟駅近くの「キラキラ橘商店街」、区が運営協力する工場アパート「テクネットすみだ」など、区内の企業や商店街を訪れ、学生たちは現場を肌で感じた。

8月には合宿も行われ、班ごとに区内の人へインタビューを行う予定。後期の本格始動をめざし、地域活性化の具体案策定へ向け、余念がない。

“社会をデザインする”デザイナー

講師として登場したのは、墨田区ゆかりの人。中でも記者が学生に尋ねたアンケートで、「もっとも印象に残った人」との質問で回答が多かったのが、現在も同区を拠点に活動している地元出身のデザイナー、マサミデザイン代表の高橋正実さんだ。社会科学部4年の吉川幸絵さんは「デザイン=相手への思いやり、すべては相手への思いやりという考えに惹かれた」という。

高橋さんは、点字と数字が印刷されたCDが入るサイズの組立型カレンダーを、「ユニバーサルデザイン」という言葉が無かった10年前に作った。デザインを良くすることで、点字のイメージを変え、多くの人にデザイン小物から点字に触れてもらおうという思いがあったという。その後、視覚障害を持つ人の中で点字を読める人は10人に1人という現実を知り、新聞の書体を作っている人と共同で、視覚障害者用文字のデザインもボランティアで取り組んだ。

パッケージとして考えるのではなく、その先まで考える─。“社会をデザインするデザイナー”と自らを位置づける高橋さんが、パッケージをデザインする際のポイントだ。ある会社からシャンプーとリンスのパッケージデザインを頼まれた際、高橋さんは商品名を容器に書かれた文字の中で一番小さくし、「シャンプー」「リンス」の文字を大きくした。「使う人がお風呂場で知りたいのは商品名ではなく、シャンプーかリンスではないのか?」。一方、店頭では商品名で探す買う側の視点を考え、外箱の商品名は大きくした。

「『デザインする』という事の奥深さ、そして高橋さんの物事に対する感じ方、考え方を知って衝撃を受けた。同時に、自分にクリエイティブな仕事はできないと悟った」と自嘲(じちょう)気味の感想を寄せたのは商学部3年の平野峻さん。「背筋があんなに長い時間ぞくぞくしたのは初めて」。理工学研究科修士1年の立川経康さんは、講義で受けた衝撃をこう振り返る。

高橋さんをはじめ、学生たちは「すみだ」で出会った人々からさまざまな影響を受けたようだ。前期の経験から、彼らはどのような“地域経営”を考えていくのだろうか。(つづく

写真1:数字と点字が印刷された組立型カレンダーを手に講義するデザイナーの高橋正実さん=6月15日、墨田区役所で(撮影:吉川忠行)
写真2:高橋さんの作品を手にする学生たち。講義終了後も高橋さんを囲み、質問は続いた(撮影:吉川忠行)

■連載・新タワー候補地を"経営"する(地域経営ゼミ前期特集─全4回)
第4回 新東京タワーを建てる意義は?(06年07月28日)
第3回 学生それぞれの「すみだ」(06年07月27日)
第1回 なぜ新東京タワーを誘致した?(06年07月25日)



初出:2006年07月26日13時49分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

連載・新タワー候補地を"経営"する(1)

なぜ新東京タワーを誘致した?

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 新東京タワー建設地の最終候補地となった墨田区。週末の29日には恒例の隅田川花火大会が催され、大勢の人でにぎわう。同区では2011年の新タワー完成を機に、これまで区を支えてきた生活必需品中心のものづくりに加え、観光を新たな屋台骨に育てようと模索中だ。

また、同区では新タワー誘致前から早稲田大学と共同で地域活性化に取り組んでいる。墨田区とはどのような区で、大学との連携で何を目指すのか。

なぜ“隅田区”ではなく“墨田区”なの?

墨田区は1947年3月15日に、北部の旧向島区と南部の旧本所区が一つになって誕生した東京東部の特別区。“墨田”の由来は、隅田川の堤防の通称“墨堤”から「墨」、“隅田川”から「田」を選んで名付けられたからだ。

区の形は、東西の長さは約5キロメートルに対し、南北は約6キロメートルと少し長く、面積は13.75平方キロメートルとなる。東京23区の中では17番目の広さだ。人口は23万6920人、世帯数12万0018世帯(7月1日現在)。山崎昇区長は同区役所職員、助役を経て99年に就任し、現在2期目を務める。

ものづくりの街・すみだ

01年10月の事業所・企業統計調査で、同区の事業所数を産業別で見ると、製造業が5645カ所でトップ。卸売・小売業5316カ所、サービス業2337カ所と続く。ものづくりというと、都内では大田区や品川区の名が挙がることが多いが、墨田区も盛んな地域だ。同区地域振興部の小川幸男・商工担当部長によると、太田・品川両区は第2次世界大戦中の軍需産業を経て電機など大型工業が栄えたのに対し、墨田区は軍服などの軍装品から、戦後は石けんやプラスチック製品などの生活必需品が製造業の中心になったという。

同区の産業の柱である製造業は、高度成長期に区の財政を支えたが、その後は地方や海外へ移転してしまった企業も多い。工場建設のコストや工業廃水などの関係で再誘致は難しく、区外への流出を止めるのが精一杯という。このため、同区では製造業に加えて観光を中心産業として育成していく方針を打ち出した。

区内の中心的な街として、映画館などが集まる錦糸町、国技館のある両国や新タワーからほど近い向島の花街(料亭街)が挙げられる。観光都市を目指すにあたり、区内には伝統的な下町文化が薫る街がある一方、お台場や六本木、表参道にみられるような強力な集客力を持つ施設があまり見当たらないのが実情だ。

なぜ新タワーを誘致したか?

新タワーの建設候補地は、東武伊勢崎線の押上・業平橋両駅の周辺地区で、広さは約6万4000平方メートル。現在墨田区が「広域拠点」として区画整理事業を進めている。押上駅には東武伊勢崎線のほか、京成押上線、都営地下鉄浅草線、東京メトロ半蔵門線の4路線が乗り入れる。

この地域に新タワーを誘致した理由として、山崎区長は宅地化や企業の生産コスト削減による区外への工場流出など、同区の産業の中心である製造業を取り巻く環境の変化を挙げている。「この状況が10年、20年、30年と続いたら墨田区の活力がなくなってしまう。区に多くの人が来てもらう観光しかない」と早稲田大学の学生との討論会で述べている。

一方、観光客を呼び込むにあたり、新タワーはその拠点となるが、周辺地域との共生を目指している。山崎区長は、東京東部全体の活性化を新タワー誘致時から掲げており、隣接する区の観光担当との連絡会を7月に設立した。9月には「観光」と「防災」を柱とした将来のまちづくりの姿を明確にする「グランドデザイン」を発表する。18日には、対象地域の名称を「すみだ中央エリア」とし、「下町文化創成拠点」をコンセプトとするなどの中間報告が公表された。

早大生が地域活性化に挑戦

同区では新タワー誘致開始以前の02年12月に、早稲田大学と事業連携協定を締結した。03年4月からは「地域を経営する」をテーマにした友成真一教授(同大理工学術院)の「地域経営ゼミ」が、区職員や地元企業、商店街を交えた地域活性化の産学官連携に取り組んでいる。

4月から7月までの前期は、学生が同区内の中小企業や区の施設を訪れたり、まちづくりの専門家らが地域経営プロジェクトを進める上で必要な知識を学生に教える形で行われた。5月には区長と学生が「30年後の墨田区」などについて1時間半におよぶ“ガチンコ”討論も行った。

同時に、後期から本格的にプロジェクトを始動する学生が、班分けや活動内容の話し合いなどを行ってきた。来年1月には同区内で行われる報告会で、研究成果を区民に発表する。

◇ ◇ ◇

新タワーを中心とした観光振興を目指す区と、タワーの活用以外のやり方も含めて地域活性化のカギを探る学生たち。4月からの3カ月間で、学生たちはこの地域にどんな印象を持ち、今後どう関わっていきたいと感じたのかを追った。(全4回・つづく

写真:新タワー建設の最終候補地となった墨田区。観光都市“すみだ”への挑戦が始まった=4月2日、東京都墨田区の商店街で(撮影:吉川忠行)

■連載・新タワー候補地を"経営"する(地域経営ゼミ前期特集─全4回)
第4回 新東京タワーを建てる意義は?(06年07月28日)
第3回 学生それぞれの「すみだ」(06年07月27日)
第2回 デザインは相手への思いやり(06年07月26日)



初出:2006年07月25日12時58分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

2007-02-19

新タワー以外の墨田も知って

25日に観光案内所オープン

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 2011年に完成予定の「新東京タワー」建設の最終候補地となった墨田区で24日、同区文化観光協会(阿部慶一会長)が、区内の観光案内の拠点となる「すみだ観光案内所」を報道関係者に公開した。25日に開業する。

案内所の外壁には同区ゆかりの浮世絵画家・葛飾北斎の「浪裏(なみうら)」を描いた縦6.2メートル、横3.75メートルの大きな看板が掲げられている。東京の観光名所である浅草から、隅田川にかかる吾妻橋を墨田区側へ渡っていくと、この大看板が出迎えてくれる。

地元で佃煮店を営む鮒五本店の古田千慧子(ちえこ)社長が昨年、同店の改装を機に、交差点に面した角地を観光案内所として活用する案を墨田区長に提案したことが同案内所開設の発端。開設に伴い、従来区役所内にあった同協会の事務所も同じ建物に移転する。

案内所部分の広さは26平方メートル。観光客への案内業務は同区在住またはゆかりのある人が2人1組で行う。「まち歩きコース」や区内の行事などを紹介する観光案内のほか、北斎の浮世絵や大相撲をモチーフにしたネクタイや絵はがき、忠臣蔵トランプなどの土産物を販売。また、同協会で講習を受けた区民による観光ガイド「すみだ観光ボランティアガイド」の申し込み受付も行う。同所は東京都の観光案内窓口にもなっており、周辺地域の下町情報も提供していく。

同協会は、案内所が区内の「まち歩き観光」の拠点となることを目指しており、今後の動向によっては区内に複数の案内所を設けることも検討している。来所者数は年間で3万6000人程度を見込む。同協会の吉田晴彦事務局長は「浅草と新タワーを結ぶこのルートは今後発展するのでは」と同所の立地に期待感を示した。

開所時間は午前10時から午後6時まで。12月29日から1月1日を除き無休。問い合わせは墨田区文化観光協会事務局(電話03-5608-6951)まで。【了】

写真:すみだ観光案内所で販売される大相撲や北斎の浮世絵をモチーフにしたネクタイ。(撮影:吉川忠行)



初出:2006年07月24日18時13分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

新タワー あなたはどう思う?

東武が24日までアンケートを実施

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 首都圏の地上デジタル放送用電波塔「新東京タワー」(第2東京タワー)の事業主体となる東武鉄道<9001>は、新タワーと周辺のまちづくりに関するアンケート「届け!私が想う新タワー」をインターネット上で行い、アイデアや意見を広く募っている。

同社が掲げる新タワーの基本理念は◆地域とともに活力のあるまちづくりに貢献◆時空を超えたランドスケープの創造◆防災面での安心と安全の提供─の3つ。アンケートでは現在の計画案に感じることや、新タワーに求める要素、イメージカラーなどを尋ねている。また、「新タワー周辺に欲しい施設は」との設問もある。

現在新タワーの高さは610メートルとなっているが、同社では放送事業者との協議やアンケート結果を受けて変更する可能性もあるとしている。新タワーのデザインは今年12月にアンケートの分析結果と共に発表される予定で、この段階で高さも事業者案として決定する。
その後、建築確認などの諸手続を経て最終決定となる見込み。同社では今後、住民向けの説明会を逐次実施していく。

アンケートの締め切りは24日午後5時。応募者の中から抽選で10人に5万円分の商品券がプレゼントされる。【了】

画像:新タワーと周辺施設のイメージイラスト(提供:東武鉄道)



初出:2006年07月21日12時25分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

2007-02-18

新タワーは"下町文化創成拠点"

墨田区「まちづくりグランドデザイン」を中間報告

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 高さ610メートルの「新東京タワー」建設の最終候補地となった墨田区は18日、建設候補地の「押上・業平橋地区」と周辺地区の将来都市像を描く「まちづくりグランドデザイン」の中間報告をまとめた。

同グランドデザインの対象地域は、新タワーが建設される「押上・業平橋地区」と、周辺の浅草通りや言問通りなど6つの通りの沿道までを含む約35万平方メートル。同区はこの地域を「すみだ中央エリア」と名付けた。

また、「下町文化創成拠点」をコンセプトとし、これを実現するため◆先進性や歴史文化が薫る「都市文化を楽しむまち」◆避難地・防災のシンボルとなる「災害に強い安全安心なまち」◆環境との共生ができる「地球にやさしい水と緑のまち」◆外国人や高齢者・来街者をもてなす「人にやさしい移動しやすいまち」 ──の4つのテーマを設定した。これをもとに「すみだ中央エリア」を「新タワー」「水と緑」「にぎわい」「機能再生」の4ゾーンに分け、整備方針を決めた。

同区では今後、27日に中間報告の内容を、地元自治会などが建設を支援する「新タワー建設推進協議会」に説明するほか、地元住民への説明会を開く予定。また、8月1日から21日までパブリックコメントを募集し、9月中にグランドデザインを最終決定する計画。

新東京タワーは首都圏の地上デジタル放送用電波塔で、2011年の完成を目指す。【了】

写真:新タワーのイメージイラスト(上段)と現在の建設予定地周辺(イラスト提供:東武鉄道、撮影:吉川忠行)



初出:2006年07月18日19時02分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

新東京タワー 近くには料亭街

花街の魅力を外国人観光客にも

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 江戸の花街の魅力を外国人観光客に紹介する催しが28日、新東京タワーの建設予定地に近い東京都墨田区の向島(むこうじま)で行われ、芸妓(げいこ)の支度の様子や長唄が披露された。

今回の催しは、東京都が海外の旅行会社に東京の観光名所を紹介する視察旅行「ファム・トリップ」の一環。2002年から毎年行われ、向島が紹介されるのは今年が初めて。今回は米国から旅行会社の企画担当者ら10人が7泊5日の日程で来日し、向島のほかに浅草やお台場なども視察する。

向島の料亭や芸妓屋などで構成する「向嶋墨堤(ぼくてい)組合」の波木井(はきい)照夫組合長は、「向島には芸妓が約130人おり、料亭が18軒ある。浅草や神楽坂など都内に残る花街のうち最大規模」と現状を説明した。また、向島は2011年の完成を目指す、新タワーの建設予定地から徒歩で15分程度と近いため、「新タワーには年間300万人くらい来ると思うが、こちらにもお連れしたい」と、高さ600メートルを超えるタワーと花街の共生への期待感を述べた。

 舞台では、芸妓がろうそくの明かりの下、化粧を始めてから、かつらをかぶるまでの様子が実演され、長唄と舞踊が披露された。また、4人の旅行参加者が、鼓(つづみ)の打ち方を芸妓から習い、不慣れな手つきながらも興味深げに挑戦していた。

参加者からは、「芸妓は歌舞伎役者になれるのか」「なぜ白塗りなのか」など、次々と質問が飛び出した。「ハリウッド映画『SAYURI』の影響はあったか?」との質問には、波木井組合長が「あれはフィクション。花街に興味を持つ方はいると思うが、映画でお客が増えたことはない」と、花街の実情と映画の違いを説明した。

向嶋墨堤組合は、1986年に芸妓屋・料亭・料理店の3業種の組合が一体となった組合で、花街の活性化に取り組んでいる。同組合では7月6日に20歳代の女性を対象に、会席料理や伝統芸能を楽しむ料亭入門講座を開く。参加費は1万円で、申し込みは同組合(03-3623 -6368)まで。【了】

上:ろうそくの明かりの下、舞台で化粧の手順を披露する芸妓(撮影:吉川忠行)
下:鼓の打ち方を芸妓から習う参加者ら(撮影:吉川忠行)



初出:2006年06月28日19時32分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

2007-02-17

新タワーは大地震でも大丈夫

東武「1000年に一度の地震を想定した設計」

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 首都圏の地上デジタル放送用電波塔「新東京タワー」建設の最終候補地となった墨田区で、同区と地元自治会などが建設を支援する「新タワー建設推進協議会」が19日に発足し、同区すみだリバーサイドホールで発会式が行われた。

同会の前身は地元で新タワーの誘致を推進してきた「新タワー誘致推進協議会」。発会式には、地元関係者など150人が参加し、高橋久雄・東京商工会議所墨田支部会長(高は「はしご高」)を会長、山崎昇・墨田区長を名誉会長に選出した。同会は新タワー建設実現への推進活動や、観光面でのまちづくりの推進する。

 発会式の席上、山崎区長は「観光と防災」をキーコンセプトとした、再開発の全体像を示す「グランドデザイン」を9月に発表すると述べた。また、事業主体である東武鉄道<9001>が、新タワー計画の進捗状況を報告。同社によると、新タワーは「1000年に一度の地震を想定して設計している」とし、マグニチュード7.9を記録した関東大震災クラスの地震が連続して10回発生しても耐えられるタワーを目指しているという。新タワーは2011年の完成予定だが、基礎構造などの基本設計については、今年度中に終えたいとの意向を示した。

今後の同会の活動について、同区地域振興部の河上俊郎新タワー・観光推進担当部長は「事業主体の東武鉄道と地元自治会・商店街や住民、墨田区が情報交換できる場にしたい」と語った。【了】

写真1:新タワーのイメージイラスト(提供:東武鉄道)
写真2:地元関係者ら150人が集まった新タワー建設推進協議会の発会式=19日、墨田区のすみだリバーサイドホールで(撮影:吉川忠行)



初出:2006年06月20日12時05分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

新タワーと江戸情緒の両立を

墨田区長と早大生がガチンコ討論

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 2011年の完成を目指す高さ610メートルの新東京タワー(第2東京タワー)の建設候補地に決定した墨田区で11日夜、山崎昇・墨田区長と早稲田大学の学生が地域問題について議論する討論会「墨田区役所を裸にする」が行われた。

墨田区では早稲田大学と2002年12月に締結した事業連携協定に基づき、地元の中小企業も交えた地域活性化の産学官連携に取り組んでいる。この連携の一環として「地域を経営する」をテーマにした友成真一教授(同大理工学術院)のゼミを03年4月から同区内で開催している。

 今年度4回目となる今回は会場を同大から墨田区に移し、山崎区長と学生36人が“ガチンコ”討論を繰り広げた。「なぜ区長になったか」、「区の財政健全化は痛みが伴ったか」など区長の区政に対する姿勢に関するものから、新東京タワーに関する内容まで、多様な質問が学生から出され、予定時間を30分超えて1時間半にわたる議論の場となった。

討論会の中で、学生から「良い街とは何か」を問われると、山崎区長は実際に居住している人数を示す「夜間人口」が多いことを条件に挙げ、「引き続き住んでもらい、引っ越してきてもらえる街」とした。新タワー建設後のまちづくりについては、「新タワーを中心に回遊してもらえる『江戸下町の庶民文化』を体感できる街を作りたい」と語り、六本木や表参道とは違った、地域特性を生かしたまちづくりの方針を強調。また、再び同区を訪れたいと思うリピーターをいかに増やすかも大切であると述べた。

“都の西北”の新宿区内にある同大が、東部の墨田区と連携する意義について、友成教授は大学を地域に誘致する活動を例に、「熱意を持って取り組めるなら必ずしも大学を誘致しなくても良い。大学との連携は、誘致活動よりも誘致後にどのような連携を行うかが大切で、距離が離れていても区の職員や学生が相互に往来することで良い関係が築ける」と、提携や協力の実質的中身がより重要だと語った。

同ゼミでは墨田区内での実地研究を重ね、来年1月に同区内で行われる予定の区民向け報告会で研究成果を発表する。(関連記事)【了】

写真1:学生からの質問に答える山崎区長=11日、墨田区役所で(撮影:吉川忠行)
写真2:新タワー建設後は「江戸下町の庶民文化」を体感できる街を作りたいと語る山崎区長(撮影:吉川忠行)

■関連記事
新東京タワー以外でも活性化を
(早大生が墨田区で地域活性化案を披露、07年01月19日)

■特集・地域活性化は誰のために(地域経営ゼミ後期特集─全4回)
第4回 新タワーは地域のDNAになるか(07年01月28日)
第3回 商店街が子どもを育てる!(07年01月27日)
第2回 高校生とまち歩きで地元再発見(07年01月26日)
第1回 新タワーで街は幸せになる?(07年01月24日)

■連載・新タワー候補地を"経営"する(地域経営ゼミ前期特集─全4回)
第4回 新東京タワーを建てる意義は?(06年07月28日)
第3回 学生それぞれの「すみだ」(06年07月27日)
第2回 デザインは相手への思いやり(06年07月26日)
第1回 なぜ新東京タワーを誘致した?(06年07月25日)



初出:2006年05月12日16時48分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

2007-02-16

東武 新タワー事業主体を設立

東武鉄道が全額出資 墨田区も新体制へ

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 首都圏の地上デジタル放送用電波塔「新東京タワー」(第2東京タワー)の事業主体となる東武鉄道<9001>は1日、新タワー建設に向けて新会社「新東京タワー株式会社」を、東京都墨田区の同鉄道本社内に設立した。

新会社は、NHKと在京民放5社が2011年の完成を目指す、高さ610メートルの新タワーの事業主体。新タワーの最終候補地が、3月末に東京都内の「墨田・台東エリア」に決定したことを受け、東武鉄道が資本金4億円を全額出資して設立した。代表取締役は、これまで同鉄道で新タワー事業を担当してきた、鉢木勇・専務取締役が兼務する。今後、新会社は放送事業者との協議の窓口となり、新タワーの設計や事業計画の策定を行う。なお、最終候補地の自治体である墨田区は、新会社への出資について、現時点では検討中としている。

一方、墨田区も1日付で新タワー建設に向けて人事異動を行った。地域振興部内に新タワー・観光推進担当部長を置き、「新タワー・観光推進課」を新設した。担当部長を含む8人が、観光、環境、建物などハード面のまちづくり、防災の4分野を担当する。

墨田区の山崎昇区長は「新タワーを東京都東部の発展の起爆剤にしたい」としている。今後、新タワーを訪れた観光客を周辺地域へ導く手法を明確にすることが課題だ。同区では新タワー課が中心となり、区内の観光スポットの立案や、台東区をはじめとする隣接区と連携した観光プランを検討していくもようだ。【了】

写真:すみだタワーのイメージイラスト(上段)と現在の建設予定地周辺(イラスト提供:東武鉄道、撮影:吉川忠行)



初出:2006年05月01日14時27分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

新タワー最終候補地とは何か

誘致側は「建設地」と明言 温度差はどこから

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 NHKと在京民放5社が2011年の完成を目指す、高さ610メートルの首都圏の地上デジタル放送用電波塔「新東京タワー」(第2東京タワー)の最終候補地が、3月31日に東京都内の「墨田・台東エリア」に決定した。この「最終候補地」という表現が、墨田・台東両区長と事業主体となる東武鉄道が開いた会見で配布された資料では「建設地」となっている。新タワーを建てる側と借りる側の温度差はどこから来るのか、建設費は誰が負担するのかなどをまとめた。

「墨田・台東エリア」とはどこか

 最終候補地は、当初墨田区と東武が中心となり誘致活動を行ってきた、東武伊勢崎線の押上・業平橋両駅の周辺地区で東武の貨物用操車場跡地。広さは約6万 4000平方メートルで、現在墨田区が区画整理事業を進めている。業平橋駅は1931年まで、浅草駅を名乗っていた。押上駅には現在東武伊勢崎線、京成押上線、都営地下鉄浅草線、東京メトロ半蔵門線の4路線が乗り入れている。業平橋駅には東武本社が、押上駅には京成電鉄の本社が建つ。

一方、台東区内では民間団体が、隅田川に隣接する隅田公園への誘致活動を別途行ってきた。2005年3月に放送事業者が、豊島区など15の候補地の中から優先的に交渉する「第1候補地」に選定した際、隅田川を挟む両区が協力してまちづくりを行うことなどの条件を付した。第1候補地に決定後は、墨田・台東両区の行政や地元商店街などが協力して誘致活動を行った。

「最終候補地」と「建設地」の違い

 墨田・台東両区と東武は、最終候補地にほど近い東京都墨田区の東京マリオットホテル錦糸町東武(現・東武ホテルレバント東京)で31日午後から会見を開いた。会見には山崎昇墨田区長、吉住弘台東区長、鉢木勇東武鉄道専務らが出席した。

放送事業者は同日午前に両区と東武に対し、墨田・台東エリアを「最終候補地」に決めたと報告したが、会場で配布された墨田区と東武連名の発表資料では「建設地」とあった。この温度差について、ライブドア・ニュースが質問すると、壇上からは苦笑がもれた。山崎区長は「放送事業者からは、最終決定したが東武・行政と3者で今後協議しなければならないことがある、と話があった。後ろ向きな協議はあり得ないので『最終候補地』は『建設地』であると思う」と述べた。

会見に先立ち、放送事業者が行った記者懇談会で、フジテレビの飯島一暢(かずのぶ)総合調整局長は「暫定的な言い方なのは事業主体となる新会社の詳細や、タワー全体の総工費が確定していないから。一刻も早く正式な議論に入りたい」と語り、今後1年ほどかけて東武などと具体的な協議を行っていく姿勢を示した。

費用は誰が出す?

放送事業者側が新タワーの総工費が明確になっていないとする一方で、東武は新タワーの概算事業費を500億円と発表している。この金額は建設費などタワー実現に必要な総額としており、東武一社が負担するものではなく、事業主体として組成される新会社が負担する方向だ。

東武は、国内有力企業や自治体などと並行して放送事業者にも新会社への参加を呼びかける見込みだが、墨田・台東両区とも現時点では出資を決めていない。山崎墨田区長は「事業について発言権を確保する必要はあるかと思うので、株主になるのも方策」、吉住台東区長も「同じような状況」と今後出資も視野に入れた協議をするもようだ。

具体的な資金調達について、東武は「(新会社への)出資金、放送事業者からの補助金、敷金といった預託金、銀行借り入れ金で調達できると考えている」としている。

デジタル放送は映るか映らないのどちらか

放送事業者が高さ600メートルのタワーを建てるのは、アンテナを高くすることで電波が遠くまで届き、林立する高層ビルの陰で受信できない面積を減らすためだ。新タワーは4月1日に始まった移動体向け地上デジタル放送「ワンセグ」や、災害時の情報発信にも利用される。

しかし、デジタル放送は「SFN(単一周波数中継放送網)混信」と呼ばれる特有の受信障害が発生すると、放送がまったく見られなくなる。放送事業者の調査によると、このSFN混信は墨田・台東エリアに新タワーを建てた場合、北関東の一部など約2万2000世帯に発生する可能性があり、対策としてはアンテナの方向調整や取り換え、ケーブルテレビへの加入などが挙げられる。対策費用は放送事業者の試算で50-80億円になり、現地調査の精度を求めるほど費用は高騰するという。

今後対策費用を放送事業者と東武が協議するが、放送事業者側は東武にも一定の負担を求める見込みで、東武は「賃料交渉とは別問題なので、別途協議したい」としている。

◇ ◇ ◇

建設候補地の選定期限である3月末で「最終候補地」は決定したが、新タワーのデザインや諸費用の負担割合など、具体的な協議は始まったばかりだ。2011年、本当に新タワーは墨田・台東エリアに建つのか。【了】

写真1:新タワーの模型の前で握手を交わす、山崎墨田区長(中央)と吉住台東区長(右)、東武鉄道の鉢木専務=3月31日、東京・錦糸町のホテルで(撮影:吉川忠行)
写真2:新タワーの誘致決定を受け、地元商店街には決定を祝うポスターがはられた=2日、東京・押上の商店街で(撮影:吉川忠行)
写真3:すみだタワーのイメージイラスト(上段)と現在の建設予定地周辺(イラスト提供:東武鉄道、撮影:吉川忠行)



初出:2006年04月03日13時13分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

2007-02-15

新東京タワー、墨田区に決定

高さ610メートル、東武伊勢崎線押上・業平橋両駅周辺に

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 NHKと在京民放テレビ5局は31日、首都圏の地上デジタル放送用電波塔として計画されている新東京タワー(仮称)の最終候補地を、東京都内の「墨田・台東エリア」に決定した。2011年春の完成を目指す。今後事業主体として名乗りを上げた東武鉄道を中心に事業会社が設立される見込み。

新タワーの建設候補地は、05年3月28日にNHKと在京民放5局が、建築や観光分野の有識者で構成する「新タワー候補地に関する有識者検討委員会(委員長:中村良夫・東京工業大学名誉教授)」からの答申に基づき、「墨田・台東エリア(押上・業平橋両駅の周辺地区)」を第1候補地に、「さいたま新都心」を第2候補地に選定した。最終決定は当初05年12月末だったが、協議時間の不十分を理由に06年3月末まで延期された。

候補地の中心は、事業主体となる東武鉄道の貨物用操車場跡地で、広さは約6万4000平方メートル。押上駅には東武伊勢崎線、京成押上線、都営地下鉄浅草線、東京メトロ半蔵門線の4路線が乗り入れる。同跡地は墨田区の区画整理事業により、同区の「広域拠点」として約4000平方メートルの駅前広場や、道幅の広い道路、住宅や商業施設などが計画されている。新タワーが建設されれば中核施設となる。

東武の計画では、タワーの仮称を「すみだタワー」としている。高さは東京タワー(333メートル)の約2倍となる610メートルで、地上350メートルと450メートルに展望ロビーと特別展望ロビーを設置する予定。建設費は概算で約500億円を見込む。計画発表当初、「墨田・台東エリア」は羽田空港の飛行ルートにあたり、航空法上の高さ規制があったが、05年4月に国土交通省が同法の規制を緩和し、建設が可能となった。

新タワーは地上デジタル放送以外に、4月1日に始まるテレビ付き携帯電話や車載テレビなどの移動体向け地上デジタル放送「ワンセグ」や、災害時の情報発信にも利用される。現在の東京タワーは、新タワー完成後も災害時などの予備として使用する予定。

墨田・台東に最終決定した理由として、第1候補地に選定された際の条件である、◆隅田川をはさんだ台東・墨田両区の区民と行政が一体となった、観光やまちづくり活動の支援や推進が図られること◆地元住民の受け入れ態勢があること◆都市防災に関する行政支援がなされること-の3点について、放送事業者が有識者委員会に、進捗(しんちょく)についての意見を求めたところ「概(おおむ)ね妥当である」との見解を得られたからという。また、有識者委員会からは◆都市文化の創世拠点◆選定時の3条件◆タワーの安全性と防災性-の3点について、「引き続き、関係者の積極的な取り組みを切に望む」との見解が出された。

一方、さいたま新都心の敗因は、放送事業者が実施した第2候補地に決定後の調査で、デジタル放送特有の「SFN混信」と呼ばれる電波障害が発生する世帯数が約14万世帯と、墨田・台東の約2万2000世帯と比べ約7倍となることだという。東京都港区のTBSで行われた、放送事業者の新タワー検討メンバーが出席した記者懇談会で、フジテレビの飯島一暢総合調整局長は、「3月に入ってからSFN混信の検証結果が得られた」と、最終決定が遅れた理由を述べた。

放送事業者と東武は、1年ほどかけて賃料や事業会社への出資など、具体的な条件を詰める予定で、新タワーの着工は08年になる見通し。【了】

画像:すみだタワーのイメージイラスト(提供:東武鉄道)



初出:2006年03月31日15時24分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

新タワー 墨田などが報道否定

放送事業者から墨田区と東武には決定連絡なし

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 首都圏の地上デジタル放送(地デジ)用電波塔として計画されている新東京タワー(仮称)の建設予定地が、東京都内の「墨田・台東エリア」に決定したとの一部報道について、同エリアへの誘致を推進する墨田区と事業主体の東武鉄道は27日、「現時点では放送事業者から決定通知を受けていない」とライブドア・ニュースの取材に答えた。

決定を報じたのは共同通信社が25日に配信した記事。共同通信は、同日までにNHKと在京民放5局が新タワーの建設予定地を「墨田・台東エリア」に決定した、と報じている。14日には読売新聞が朝刊の一面で同内容を報じたが、この時も墨田区と東武は、放送事業者側から決定連絡が来ていないと報道を否定した。

新タワーは、NHKと在京民放テレビ5局で構成する「在京6社新タワー推進プロジェクト」が、地デジの首都圏の発信拠点として計画。高さは現東京タワーの約2倍となる600メートルで、東武の計画では地上350メートルと450メートルに展望ロビーと特別展望ロビーを設置する予定で、建設費は概算で約500億円と見込んでいる。

同プロジェクトは、2005年3月28日に「墨田・台東エリア」を第1候補地に、「さいたま新都心」を第2候補地に選定している。最終決定は05年12月末の予定であったが、協議時間の不十分を理由に06年3月末に延期されている。【了】

写真:「墨田・台東エリア」の新タワー建設候補地周辺=15日、東武鉄道業平橋駅で(撮影:吉川忠行)



初出:2006年03月27日14時45分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

2007-02-14

新タワー、本当に墨田で決まり?

「放送事業者から連絡はありません」

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 「例の記事ですよね?今朝うちの(山崎昇)区長も区議会の冒頭で『放送事業者から(墨田区に決まったという)連絡はありません』と説明しましたよ」と14 日、墨田区の広報担当者は困惑気味に語った。「例の記事」とは14日の読売新聞朝刊の記事「第2東京タワー墨田区に」のことだ。この記事では、地上デジタル放送の首都圏の発信拠点としてNHKと在京民放テレビ5局で構成する「在京6社新タワー推進プロジェクト」が計画する、高さ600メートル級の新東京タワー(仮称)を墨田区を含む「墨田・台東エリア」に建設することを「決定した」と伝えている。

「新タワー推進プロジェクト」は2005 年3月、新タワーの建設予定地として「墨田・台東エリア」を第1候補地に、「さいたま新都心」を第2候補地に選定した。当初、05年12月末までに最終決定する予定だったが、協議時間の不十分を理由に3月末まで延期されている。現在の各候補地の動きをまとめた。

墨田区長「私が決めることではないから、100%とは申し上げられない」

 新聞報道を受けて墨田区は、14日の午前中には同区のウェブサイト上に「放送事業者側から正式決定の報告を受けておりませんので、現在も協議中であると認識しております」とコメントを掲載した。「墨田・台東エリア」の事業主体に名乗りを挙げている東武鉄道の広報センターも「放送事業者からは決定の連絡はありません」と状況を語った。同社では新タワーの仮称を「すみだタワー」としている。

同日午前10時から行われた区議会の予算委員会で、山崎区長は新タワーについて「99.9%(墨田区に)決まったととらえている」と発言し、残りの0.1%の理由については「私が決めることではないから、 100%とは申し上げられない」と答弁した。また、報道内容について新タワー誘致を担当する同区の拠点整備課には、問い合わせが殺到したという。前述の広報担当者は「このまま(報道内容が)本当になってくれると良いのですが」と本音も。「発表するのであれば1社のスクープではなく、記者会見を開いて皆様にお知らせしたい」と区の姿勢を話した。

さいたまの事務局には新たに2グループが提案

「第2候補地」のさいたま新都心にも動きがあった。県・市・地元経済界を中心とする誘致団体「さいたまタワー実現大連合埼玉県・さいたま市合同事務局」(総代表・石原信雄元内閣官房副長官)に、IT関連企業など2グループが提案を持ちかけている。同事務局では「放送事業者には以前の3案に加え、このような話があると伝えたが、具体的な内容を放送事業者側に提案するには至っていない」とし、現時点では新たな2案は同事務局で検討している段階だという。

また、来年度予算で埼玉県とさいたま市は、それぞれ1354万1000円を調査費として計上している。

東京タワーは千葉県内に緊急用タワーを計画

現在地上デジタル放送の電波を送出する東京タワーはどう出るのか。タワーを運営する日本電波塔では、04年の新タワー構想発表直後に放送事業者へタワーの改修計画を提案している。現在のアナログ放送用アンテナを、11年7月のデジタル放送完全移行後に撤去、アンテナ部分の高さを約100メートル高くして、タワーの全高を333メートルから360メートル程度にする計画。

さらに年明けには、東京タワーの敷地内に別棟で送信設備を新築し、災害対策として千葉県君津市に緊急用タワーを建てる計画を放送事業者へ提案している。これらの費用はすべて同社が負担する見込み。

練馬では1000メートルのタワー計画

05 年3月の候補地選定でもれた練馬地区では、民間誘致団体「東京ワールドタワー推進協議会」(会長・奥山則男元都議会議長)が、高さ1008メートルの「東京ワールドタワー」計画を05年11月末に発表した。建設予定地選びの大詰めを迎えた3月に入るとタワーの概要を公表した。

敷地は西武鉄道グループの娯楽施設「としまえん」内で、地上350メートルと650メートルの高さに展望室を設ける予定。事業主体には菓子大手のロッテ(本社:東京都新宿区、重光武雄社長)に協力を要請した。だが、西武鉄道広報部は「現時点では検討まで至っていない」、ロッテは「具体的な内容はこれから」と誘致団体の熱意とは温度差が見られる。

放送事業者の見解は

墨田区、東武鉄道、さいたま大連合の担当者の話を総合すると、現時点では放送事業者側の正式見解はまとまっていないもようだ。ある放送事業者によると、1年前に第1、第2候補地を選定しているので、これらを基に検討しており、最低限3月末には何らかの発表を行う予定だという。

すでに3月も半ばを迎えた。一体いつになったら決まるのか、というのが各候補地の本音だろう。【了】

写真1:すみだタワーのイメージイラスト(上段)と現在の建設予定地周辺(イラスト提供:東武鉄道、撮影:吉川忠行)
写真2:建設予定地周辺の商店街には新タワー誘致を目指す横断幕が掲げられている(撮影:吉川忠行)



初出:2006年03月15日18時48分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

練馬の1キロタワー、概要発表

デザインは松本零士氏、としまえんに計画

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 地上デジタル放送の発信拠点として計画されている新東京タワー(仮称)の誘致を推進する「東京ワールドタワー推進協議会」(奥山則男会長)は13日、東京都練馬区の遊園地「としまえん」内に計画している1000メートル級タワーの概要を発表した。

タワーの高さは1008メートル。現時点で世界一の高さを誇る、カナダのCNタワーの533メートルと比べ倍近い。地上350メートルと650メートルの高さに展望室を設ける予定で、敷地はとしまえんの用地約30万平方メートルのうち、タワーと周辺施設をあわせて2万平方メートルを計画。また、事業主体として菓子大手のロッテ(本社:東京都新宿区、重光武雄社長)に協力を要請したことも明らかにした。

 同協議会は、練馬区内の商工会や体育、福祉、文化関係団体の会長や副会長が参加する「練馬八日会」を中心とする民間団体。タワーの高さのうち、8メートルは「練馬八日会」が由来。特別顧問に同区在住の漫画家・松本零士氏を迎え、タワーのデザインなどの協力を得ている。東京都豊島区のホテルメトロポリタンで行われた会見で、同協議会の山田忠義副会長は「世界一の高さだけではなく、環境に配慮したエコタワーを目指す」と意気込みを語った。

新タワーの建設予定地については、 2005年3月にNHKと在京民放テレビ5局で構成する「在京6社新タワー推進プロジェクト」が、「押上・業平橋駅周辺地区」を第1候補地に、さいたま新都心を第2候補地に選定している。また、現在地上デジタル放送の電波を送信している東京タワーを運営する日本電波塔も、タワーの全高を333メートルから 360メートルに改修する計画を放送事業者へ提案している。当初05年12月末を目途に建設地を決定する予定であったが、協議時間の不十分を理由に3月末まで延期している。

ライブドア・ニュースの取材に対し、ロッテ本社広報室は「協力要請を受けたが、具体的な内容はこれから」と話し、西武鉄道広報部は「としまえんの使用について要請があったのは事実。ただしタワー建設には自治体などの協力が不可欠で、建設する条件がすべて問題なければ検討を開始するが、現時点では検討まで至っていない」と語った。【了】

写真1:東京ワールドタワー推進協議会の特別顧問を務める漫画家・松本零士氏のデザイン画(提供:同協議会)
写真2:新タワーへの思いを語る松本零士氏(撮影:吉川忠行)



初出:2006年03月13日18時33分 吉川忠行/ライブドア・ニュース

2007-02-13

新東京タワー決定は3月か?

年内決定を断念、2006年3月末まで延期

[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]

 地上デジタル放送の首都圏の発信拠点として計画されている高さ600メートル級の新東京タワー(仮称)の建設地の決定期限が、2006年3月末まで延期となった。8月25日に第1候補地の墨田区、事業主体となる東武鉄道、NHKと在京民放テレビ5局で構成する「在京6社新タワー推進プロジェクト」の3者間で交わした確認書では、12月末までに最終決定を行うとしていた。3者は26日に年内決定を断念し、同日付で06年3月末までに決定するとした変更合意書を交わした。

決定時期が延期となった理由について、墨田区拠点整備課の池田成美課長は「9月に入り放送事業者側と協議を開始したが、放送6社が一堂に会する場を多く設けられず、協議時間が不十分。根本的に問題があるのではなく、具体的にどう進めるか確認が必要」と語り、東武鉄道広報センターの福田康人主幹も、同様に協議時間の不足を理由に挙げた。

また、放送事業者側と東武側とのタワー賃料提示額の隔たりが大きいのが要因ではとの一部報道について、福田主幹は「現在経済的、技術的な面で放送事業者側と協議を行っており、その後に賃料の話になる」とし、提示額の開きによる延期との見方を否定した。

現在のアナログ放送からデジタル放送へ完全移行するのは2011年7月で、新タワーは遅くとも11年初頭には完成し、試験運用などを開始する必要がある。東武は新タワー建設地の最終決定を、3月よりも可能な限り前倒しになるようにしたい意向だ。東武が計画する「すみだタワー」の高さは約610メートル。地上350メートルと450メートルに展望ロビーと特別展望ロビーを設置する予定で、商業施設やレストランも設ける計画。建設費は概算で約500億円と見込んでいる。

放送事業者側は、3月28日に押上駅/業平橋駅周辺を建設予定地とする「墨田・台東エリア」を「交渉優先候補地(第1候補地)」として条件付きで選定した。付帯条件は◆隅田川をはさんだ台東・墨田両区の区民と行政が一体となった、観光やまちづくり活動の支援や推進が図られること◆地元住民の受け入れ態勢があること◆都市防災に関する行政支援がなされること-の3点。7月には台東区側の誘致推進団体と連絡会を結成するなど、連携を強めている。また、前述の池田課長によると、新タワー建設予定地のみならず、周辺地域も含めた災害に強いまちづくりを推進するため、放送事業者側と調整を行っていくという。

一方、第2候補地である「さいたま新都心」の関係者は、不確実ながら12月に入り「年内決定は難しい」との情報を入手していたという。27日の定例会見で、上田清司埼玉県知事は「(協議が)難航しているということは、第1候補地として色々な問題点があることを露呈したものだと思う」と語り、今後の動向に備えるようだ。誘致団体である「さいたまタワー実現大連合埼玉県・さいたま市合同事務局」は「今後も防災面や地盤の強固さなどのメリットをアピールしていきたい」と、最後まで誘致活動を行っていく構えだ。【了】

画像:すみだタワーのイメージイラスト(提供:東武鉄道)



初出:2005年12月28日16時00分 吉川忠行/ライブドア・ニュース