不景気でも祭りを大切にする“下町の心意気”
墨田区長と早大生が討論会
[私が過去にニュース媒体で出稿した記事の再掲です]
7月に高さ610メートルの新東京タワーの建設が始まる墨田区で8日夜、山崎昇・墨田区長と早稲田大学の学生が、同区や地域活性化について議論する討論会「墨田区役所を裸にする ~区長とのディスカッション~」が行われた。
墨田区では早稲田大学と2002年12月に締結した産学官連携協定「包括的事業連携協定」に基づき、地元の中小企業も交えた地域活性化の産学官連携に、新タワー誘致前の03年から取り組んでいる。産業以外の分野を含めた連携は全国初の試みで、この一環として「地域を経営する」をテーマにした友成真一・同大学大学院環境・エネルギー研究科教授の「地域経営ゼミ」が、03年4月から同区内で行われており、今年で6期目に入った。
地域がもともと持っている良さや特色、人材などの資源を活用し、地域の価値の最大化に取り組むのが特徴の地域経営ゼミ。必ずしも1年間で成果を求めずに、長期的な視野で地域活性化に取り組むのが特徴で、さまざまな学部から学生が集まる学部横断型のゼミだ。
6回目となる今回の討論会には、早大に日本語の語学留学をしている留学生2人を含む32人の学生が参加した。留学生の参加は今回が初めて。
祭りの寄付は不景気でも集まる
「はじめて墨田区に来ると、墨田区の強みと弱みが見える。(1年間のゼミで)一番期待しているのは、どんなことをすれば若い人が足を運んでくれるかをぜひ提案してほしい」。討論会の冒頭、山崎区長はこう述べ、区内にいるとわかりにくい同区の“強みと弱み”について、外部からの新鮮な視点で指摘を求めた。
ゼミ生からは、区と国の関係についてや墨田区の魅力など、行政や地域に関するものから、区長がどう家族と接してきたかまで、幅広い分野の質問が出た。留学生からも「女性が政治家になるのが難しいのはなぜだと思うか」「墨田区を若者にどうアピールしているか」という問いかけがあり、予定を10分オーバーする1時間の議論が行われた。
討論会の中で、学生から「区長になってしんどかったことは何か」と問われた山崎区長は、バブル崩壊後に税収が急激に落ち込んだ結果、区の財政が危機的状況になり、職員の給与の一部カットを実施したときのことを挙げた。
「いろいろな部署を回ったときに、苦しいときはみんなでがんばろうという職員の気持ちがありがたかった。(行財政改革により)今は貯金ができるようになった。職員の懐に二度と手を突っ込むことがないようにしたい」と、当時を振り返りつつ語った。
墨田区の良さについては、地域のコミュニティーが根付いている点や、お祭りのときには不景気でも寄付が集まる“下町の心意気”を学生たちにアピールしていた。
「区長をひとりの人間として見られるようになった」
討論会の感想を学生に尋ねると、人間科学部2年の石井沙織さんは、「区長をひとりの人間として見られるようになった。個人を見てくれないと思っていたが、自転車で区内を移動していることなどで親近感を持った。でも聞きたいことは30パーセントくらいしか聞けなかったのが残念。区長自身の幸せが何なのかなどを聞きたかった」と、区長という役職から想像するイメージとは違うものを感じたようだ。
一方、留学生からは、「時間もなかったが、墨田区は若者の居住人口を増やすために何をやっているのかや、区長のアイデアをもっと聞きたかった」という声も聞かれた。
今回の討論会では、墨田区に関することに加えて、区長が自分の子どもとどう接してきたかなど、個人的な話も学生が引き出していた。友成教授に昨年10月に行われた前回との違いを尋ねると、「前回は(はしかの流行などで日程が延期となり)後期の開催だったため、学生が墨田区や区長に関する知識を得てからの討論で、構えてしまっている部分があった。今回は何も知らない状態だったので、区長の本質に迫ることができたのではないか」と、区長がどのような考えで墨田区や自分の家庭に接しているかを、学生がある程度引き出せた要因を語った。
同ゼミでは来週から墨田区内で実地研究を重ね、来年1月に区内で行われる予定の住民や商店主向け報告会で研究成果を発表する。
写真1:山崎墨田区長と早大生の討論会=8日夜、東京・墨田区役所で(撮影:吉川忠行)
写真2:墨田区の良さについて「祭りのときには不景気でも寄付が集まる“下町の心意気”」と語る山崎区長(撮影:吉川忠行)
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■関連リンク
早稲田大学「地域を経営するゼミ」 国際班(留学生中心の班のブログ)
墨田区・早稲田大学産学官連携事業
墨田区
早稲田大学
◆
初出:2008年05月09日13時30分 吉川忠行/オーマイニュース
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